男性の助産師について

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私の長男が生まれた2000年ごろに、確か日本では男性の助産師を認めるかどうかで論議がありました。「女性が嫌がっているから」という理由で認められなかったことを覚えています。

そして、20年以上たった今でも、日本では男性の助産師が認められていないそうです。 未だに男性が助産師になれないという事実にも驚きましたが、もっと驚いたのは男性が助産師になれない理由が「女性の反発が強い」ということです。

米国では1964年に雇用における性別、人種、肌の色、出身国などの差別を禁止した、いわゆる「タイトル・セブン」が発効されました。それによってあらゆる分野での差別を禁止するとともに、その後発効された「アファーマティブ・アクション」(積極的是正処置)によって、差別を禁止するだけではなく、積極的に今まで昇進や雇用の機会の少なかった性別や人種の人に機会を与えていこう、という法律さえあります。

もちろん、差別禁止事項には例外もあります。例えば、故ケネディー大統領の映画を作るため、故ケネディー大統領を演じる役者を「白人男性」とすること、カソリックの教会の神父さんを雇うときに「カソリック教徒」とすることは、「真実の職業的資格」(Bona Fide Occupational Qualification – BFOQ)と言い、差別にはなりません。「顧客が好むから」という理由で、旅客機の客室乗務員を女性に限定する、オーケストラの団員を白人に限定する、などは差別に当たります。

アメリカ的に考えれば、女性の顧客が「助産師から男性の排除」を好むから、という理由で男性を雇わないどころか、助産師という職業全体から公然と締め出す、というのは性別差別になります。そもそも、男性助産師の資格を認めたところで、日本全国の助産師が全員男性になる訳でもないですし、すべての「女性」が男性の助産師を嫌がっている訳でもありません。自分が男性の助産師にあたっても「嫌だ」と言って診察をお断りすれば良いのに、法律で男性すべてをその職業から排除するのは差別としか言えません。

ところで、米国ではどのくらい男性の助産師(Midwife Nurse)がいるのでしょうか?

アメリカでは男性の助産師は2021年現在全体の6.87%です。アメリカにおいても男性の助産師は少数派ではありますが、興味深いことに女性助産師の平均年収は$75,478に対し、男性助産師の平均年収は$79,363となっています。もちろん、男性助産師の方が勤務時間が長いとか、物価の高い地域で働いているとか、理由はいろいろあると思います。(参考文献:”Nurse Midwife Demographics and Statistics in the US” , ZIPPIA)

では、男性助産師がいるメリットはなんでしょうか?

まず、お産の現場では、パパとコミュニケーションが取りやすい、というメリットもあるそうです。男性助産師が赤ちゃんの扱い方を教えてくれることで、パパの育児参加をスムーズにする、という話も聞きます。

また、不妊治療が増えている現在、知識を持った男性助産師が治療の現場にいることで、男性の患者さんが肩身の狭い思いをするのを防ぐ、という意見もあります。女性が男性の助産師にデリケートな話をしたり、体を触られたりすることに抵抗があるのと同じく、男性も女性の助産師に抵抗がある場合もあります。(参考文献:「男性は助産師になれないの? 課題と男性助産師の未来」じょさんしnavi)

日本でも、産婦人科の医師は男性がたくさんいます。なぜ助産師だけ男性がなってはだめなのでしょうか? 未だに「育児は女性の仕事」という考えの名残でしょうか? 或いは女性だけの仕事であれば、全体的に給料は低く抑えられるところ、男性が助産師になると、助産師全体の給料が引き上げられることになるからでしょうか?

話を元に戻しますが、集団で反対すれば公然と男女差別をしても良いというものではありません。日本でも早く助産師の男性差別はやめてほしいと思います。

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