「お前はクビだ!(“You are fired!”)」

トランプ前大統領のパフォーマンスである、「お前はクビだ!(You’re fired!)」は結構有名ですよね。映画の中にも同様のシーンがでてくることもあり、米国はあたかも簡単に従業員をクビにできる国のような錯覚もうまれると思います。

確かに、米国では日本のような終身雇用制度はありませんが、かといって、「お前はクビだ!」という一言で従業員を解雇できるほど簡単ではありません。雇用主の立場からすると、きちんと解雇する理由があるにもかかわらず、「不当解雇」と言って訴訟された例はたくさんあります。

では、具体的に従業員を解雇するにはどのような手続きを踏めば良いのでしょうか?

パフォーマンスや遅刻が多い、などの理由で解雇する場合には、3回は警告(Warning)を出し、チャンスを与えること。一度目の警告は口頭(Verbal Warning)、二度目は書面(Written Warning)、そして三度目は、書面で「最終警告(Final Warning)」として、直してほしい部分をはっきりすることと、期限を切ることです。

ただ、犯罪を犯す、職場でアルコールを飲む、ドラッグを使う、など、明らかに違法行為を犯した場合には、警告をださずに即解雇することも可能です。

どちらの場合にも、記録を取ること、残すことが大事なのは言うまでもありませんが、従業員ハンドブックにどのようなことをやった場合には即解雇される可能性がある、ということを明記しておくことも大事です。

警告を出したのであれば、口頭の警告であっても、内容を文書で残しておきましょう。その場合、証拠となるインフォメーションも一緒に残しておくことが大事です。

従業員をやむを得ず解雇する場合には、「お前はクビだ」ではなく、まず本人と話をして、状況によっては、猶予期間やベネフィットのパッケージをつけて、本人に辞任を促すべきです。後でトラブルにならないように、ベネフィットのパッケージをつける代わりに、雇用主を訴えない、という書類にサインを促すことも大事です。

そもそも、安易に従業員を雇わないことが一番大事です。本当にそのポジションに人が必要なのか、本当に面接をした人がそのポジションや自分の職場にふさわしいのかを考えましょう。

そのポジションのオファーを受け入れて、会社で働くためには、他の会社を辞めたり、他のオファーを断ったりしている可能性があります。それにもかかわらず、簡単に解雇された、と思うと、その従業員は会社を訴えてやろう、と思うかもしれません。その人を一生面倒見る、ぐらいの気でないと、雇うべきではありません。

将来に渡って、そのポジションが必要でない限りは、人を雇わないことです。初めから期間限定で人を雇うのであれば、それこそ、人材派遣会社を通して期間限定で人を雇う方が安全です。前にも書きましたが、雇用主がレイオフをすると、失業保険の掛け金が上がったり、保証金の一部を請求されたり、しっぺ返しを受ける可能性がありますよ。

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