日本人の生産性が上がらない理由
エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規 氏
連日伝えられる自民党議員の裏金問題ですが、果たしてこの問題は解決するのでしょうか?
マスコミの新たな「ネタ」が尽き、国民が飽きてしまえば、適当なところに「落ち着く」(?)だけのような気がします。この国は常にそれを繰り返してきました。落ち着く先が軽い処分や党規則の適当な変更(改正ではない)というごまかしになるのかはわかりませんが、いずれにしても何故今回の問題が起きたのか、誰が関わっているのかは明確にならず、更には二度と不正が起きないような抜本的な対策が行われることは無いでしょう。「お茶を濁して」終息させるのが関の山だと感じています。
福島原発事故も未だに解決していないにも関わらず、すでに終わったことのようです。福島第1原発では今もデブリ(原子炉内の冷却機能が失われ、核燃料や構造物が溶けた後に、冷えて固まったもの)に水をかけて冷やし続けています。推計880トンもの硬さも成分も分からない燃料デブリからは、常時強力な放射線が放出され続けており(※1)、当然、廃炉や取り出し作業どころではありません。それにも関わらず、岸田政権は原発再稼働へと大きくかじを切っています。原爆の被爆地広島にルーツを持ち、自身も広島1区から政治家の道を踏み出した岸田首相が原発再稼働を進めるとは、ビジョンや理念を持たない首相と揶揄されても仕方がないでしょう。その岸田首相は、「増税メガネ」と呼ばれた当初のイメージを払拭すべく減税を打ち出したものの、その実態は「減税」とは大きく乖離していたため、今度は「減税ウソメガネ」とまで呼ばれています。
先々月ここに書きました(※2)が、数多くの地震災害からいくつもの教訓を学んできたはずの日本の現実は、とても地震国とは思えないモノです。未だに被災地能登には十分な物資が届いておらず、水やトイレにも不自由しているというのは、同じ地震国のイタリアと比較するとその情けなさに呆れるばかりです。最新の情報でも、地域防災拠点に備蓄している携帯トイレは1日分にも満たず、試算では1拠点に1,200人以上が避難するのに対し、わずか5基のマンホールトイレ、2基のくみ取り式仮設トイレ、6基の簡易式トイレ便座頼みであるという実態が伝えられています。(※3)もはや行政や政治の不作為による犯罪と言って過言ではないでしょう。
また、何度も取り上げてきたマイナンバー制度ですが、国家公務員のマイナンバー保険証利用率が4.36%で、推進役である厚労省の職員でもわずか4.88%という数字が明らかになっています。(※4)この事実を前にして、どの口が全国民にマイナンバー保険証をなどと言えるのでしょうか?日本のマイナンバー制度の仕組みに問題があるのは、以前エストニアの事例との比較で検証しています(※5)が、問題のある仕組みを頑として進めようとすることには違和感しかありません。
これらすべてに共通する問題が現在の日本、特に行政組織に横行しているように思えます。当然、企業組織にもそれは浸食しており、結果的に日本の組織の生産性が上がらない大きな理由となっています。それは「手段の目的化」です。手段の目的化については、以前書いていますが、過去記事が消えているようなので、今回は少し角度を変えて述べてみたいと思います。
自民党議員の裏金問題を単純化して見れば、政治家としての活躍の場を広げるための手段がお金であり、そのお金を集めることが目的化してしまい、それが歪んだ形で起きたのが今回の問題だと言えます。まず政治にお金がかかる現状を変えないと根本的な解決は難しいでしょう。また、政治家の犯罪に対する罰則が軽いことも拍車をかける遠因でしょう。そもそも政治家は我々国民の生活をより良くするために働くべき存在で、結婚式などの冠婚葬祭で挨拶をしてもらう、一私企業の利益のために動くなどといったことを求めるべきではありません。国民が政治家に求めるものを間違っているためにそこに賄賂や裏金が横行する隙ができていると言えます。国民は政治家に市民生活を送る上での問題点や要望を伝え、政治家は自身の掲げるビジョンや理念と擦り合わせながら内容を検証した上で、具体的な改善や解決に向けて立法や行政への働きかけを行うというのが本来あるべき姿だと思います。
原発問題も同様で、原子力発電は国民の生活をより良くするための選択肢の一つでしかありません。当然、他の選択肢とコストやリスク、メリット・デメリットをすべて明らかにした上で、議論し決定するべきでしょう。あくまで国民の生命・健康・安全・より良い生活を守り向上させることが目的なので、手段はそれを実現するための最良なものを選択するだけです。原発を推進する政府や政治家は、隠し事や誤魔化しなしで、原発が最善、最良の選択肢であるという事を明確にすべきです。
地域防災上のトイレ(だでけではありませんが)問題も、トイレパックや簡易トイレを用意することが目的化しており、被災した市民が最低限快適な避難生活を送れるようにするという本来の目的は霞んでしまっています。最低限快適な避難生活というのであれば、トイレだけでなく、給水や食事、シャワーや宿泊設備、そしてそれらを支えるボランティアなども含めた総合的な仕組み作りを行ったイタリアの事例に倣うべきです。イタリアの事例は、本来の目的を達成するために様々な手段を取捨選択した結果と言えます。
マイナンバー制度も、その目的が国民の利便性向上を謳うのであれば、当然そのリスク・問題点の検証とその解決は避けて通れません。健康保険証の利用度が高い高齢者に、使いこなせないスマートホンの利用を前提とするような施策は本末転倒です。手段であるマイナンバー保険証の推進が目的化してしまい、目的であったはずの国民の利便性向上はどこかに行ってしまっています。この点については以前書いたエストニアの事例(※5)が大いに参考になります。しかし、閣僚や国会議員のエストニア視察はなく、自民党議員のエッフェル塔での記念撮影や、政務秘書官を務める岸田首相の長男の高級百貨店「ハロッズ」でのお土産購入が新聞やマスコミに取り上げられるのみとは情けない限りです。
この国の様々な問題に「手段の目的化」が隠れています。企業組織の中にもそこかしこに「手段の目的化」が横行しており、それによって明らかに生産性だけでなく、従業員のモチベーションが低下しているケースも多々あります。日本企業でDXが上手く進んでいない原因の多くはここにあります。同時に何らかの意図や作為が「手段の目的化」の陰に隠れていることもあるということも認識すべきでしょう。そのために問題の本質が見えなくなっている(見えないようにされている)ことも多いという事にも注意すべきでしょう。
※1:福島第1原発、廃炉へ厳しい道 デブリ880トン最初の回収1グラム(産経新聞)
https://www.sankei.com/article/20240311-TWQZD5XIWZL6BK2YLVWXP5P7KI/
※2:過去に学ばず、未来を見ない日本人(The Stellar Journal)
※3:災害時トイレ 避難所備蓄に不安も 携帯型、1日で尽きる恐れ〈タウンニュース〉
https://article.yahoo.co.jp/detail/a6af6d72c9f1c3d697712edd36f7bf8abb4f41b6
※4:マイナ保険証利用、国家公務員も低迷 利用訴える厚労省は4.88%(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15855770.html
※5:マイナンバーカードは家畜証明書(The Stellar Journal)
以上
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