動物を飛行機・職場に持ち込む

遅ればせながら、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

2024年は、日本では新年早々地震や飛行機事故が起こり、大変なことになりましたね。亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被害に合われた方々の一日も早い復興をお祈りいたします。

2日におこった羽田空港での事故で、全員飛行機を脱出できたことを称賛するのもさることながら、なぜか、飛行機の貨物室で預かっていた犬と猫が犠牲になったことに対して、議論が巻き起こっているようですね。

以前にも書きましたが、米国では、一時期、「精神的介助動物(emotional support animals)」という名目で、飛行機に小動物をケージに入れずに持ち込むことができた時期がありました。勿論、「この人は精神的に問題があり、ペットをずっと抱いている必要がある」という医師からの診断書を飛行機会社に提出する必要がありました。

ペットが「(精神的)介助動物」としての公式なトレーニングを受けている証明は必要ありませんでした。もちろん大きさの制限はありましたが、犬や猫だけではなく、ブタ、クジャク、果てはヘビまで精神的介助動物として持ち込まれたそうです。

しかし、「精神的介助動物」が他のお客さんや乗務員にかみつく、威嚇する、尿を漏らす、などいろいろ問題があり、飛行機の乗務員が強く反対をして、これは2021年には禁止になりました。精神的介助動物として飛行機に乗せることができるのは、しかるべき機関で公式に「介助犬」として、飛行機に乗ることまでトレーニングされた犬だけになりました。(参考文献:“The DOT is cracking down on emotional-support animals on airplanes and will allow only trained dogs to fly” by Thomas Pallini on December 2, 2020:)

もちろん、ケージに入れた犬・猫などを客席に有料で持ち込める制度がある航空会社はあります。しかし、それも、ある程度大きい動物だと貨物室に預ける必要があります。決して、すべてのペットを客室に乗せることができる訳ではありません。

また、客席にペットを持ち込むのも、あくまで「荷物」の一環としてですので、飛行機が事故で酸素マスクを使用する際にペットが酸素マスクを使うことはできませんし、緊急時に外に脱出する時に、荷物を持っていけない場合にはペットを連れだすこともできません。

(参考文献:“Pet in the Passenger Cabin” United States Department of Transportation. )

自分にとっては愛する家族のワンちゃん、ネコちゃんであっても、飛行機を利用する別のお客様や乗務員の方のなかには、アレルギーを持っている方もいらっしゃいます。お客様を誘導する乗務員の方が、緊急時にアレルギーで倒れてしまったら、お客様の誘導ができなくなる、という危険性もあります。

飛行機の客室は、乗客にとっては心地よい移動をする場所なのかもしれませんが、飛行機の乗務員にとっては職場なのです。飛行機会社はお客さんの安全を保障するのはもちろんですが、従業員の安全を守る義務もあるのです。

私も犬を飼っているので、犬を緊急時に助けたい、という気持ちはわかります。しかし、私は例え車で出かけるときでもバケーションに行く時には犬は連れて行きません。バケーションに行った先でもし犬が逃げてしまったら、永遠に犬と会えなくなる可能性があります。実際に、インターステート(米国の州をまたぐ長距離高速道路)を長距離運転の最中、ガソリンスタンドで迷い犬がふらふらしているのを見たこともありますし、車が渋滞している道路脇に犬が走って来て、飼い主が必死で犬を追っているのを見たこともあります。

では、普通のオフィスに身体障害のある従業員が「介助犬」「精神的介助犬(動物)」を仕事に連れてくる必要がある、と言った場合、雇用主はそれを認める必要があるでしょうか?

米国では、身体障害の有無で従業員を差別することは法律で禁止されています。また、身体障害のある従業員が仕事を遂行するにあたって雇用主は「合理的配慮(Reasonable Accommodation)」を与える必要があります。

「介助犬」や「精神的介助犬(動物)」は合理的配慮にあたる可能性がある、としながらも、雇用機会均等委員会(EEOC)では明確な規定はありません。どうして介助犬などが必要なのか、どの場合にどのような仕事を遂行するために必要なのか、介助犬は公式なトレーニングを受けているか、などすべて調査してから結論を出すことをお勧めします。いくらトレーニングを受けている犬といっても、別の従業員に犬アレルギーがあり、深刻なアレルギー反応を起こす危険性もあるからです。(参考文献:“Service Animals and Emotional Support Animals” by ADA.)

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