昔の英雄は今の悪者?
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
パンデミックの最中、2020年、ミネアポリスで起きた、白人警官によるジョージ・フロイドさん殺害事件の後、各地で黒人差別に対する暴動が起き、シカゴでもミシガン通りにある商店街のショーウィンドーが壊されました。そして、シカゴの中心地のグラントパークという公園にあった「アメリカ大陸発見者」であるクリストファー・コロンブスの像は撤去されました。
一見、クリストファー・コロンブス像と黒人差別に対する暴動は関係がないように思えますが、「コロンバスのアメリカ大陸発見は、殺戮と奴隷制度を引き起こした」という批判があり、またアメリカ大陸は、ヨーロッパ人からみると、「コロンブス」によって「発見」された訳ですが、アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)の方たちから見ると、発見でも新大陸でもなんでもありません。
ただ、クリストファー・コロンバスの像は、シカゴのイタリア系移民が寄付を募って建てた、という歴史もあり、問題を複雑にしているのは事実です。(参考文献:”As monuments to Christopher Columbus come down across the US, Italian-Americans campaign to protect a symbol of ‘culture heritage’, TEFAF New York, August 13, 2020)
クリストファー・コロンブスの像だけではなく、ここ数年「人種差別」の象徴として廃止されたものがいくつかあります。
例えば、以前は米国での婦人科医学の父とされていたシムズ医師は、黒人女性を奴隷として買い取り、人体実験をした、として、やはりニューヨークで像が撤去されました。(参考文献:”Father Of Gynecology, ‘Who Experimented On Slaves, No Longer On Pedestal IN NYC”, WBEZ Chicago, April 17, 2018)
アカデミー賞を受賞した有名な映画「風と共に去りぬ」も、映像にはたくさん人種差別的な表現がされている、として、HBOやNetflixから外される、という騒ぎもありました。結局は現在ではは受け入れがたい差別的な表現もあるけれど、映画は映画として受け入れる、ということになったようではありますが。。(参考文献:”Gone with the Wind Returns to Hbo Max with a Disclaimer About Its Portrayal of Slavery”, Bazzar, June 25, 2020)
アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントン氏や大統領も務め、アメリカ独立宣言の起草者の一人であるトーマス・ジェファーソン氏も奴隷を所有していました。しかし、彼らの功績は奴隷所有とは別に考えられています。
日本でも一夫多妻、妾がまかり通っていた時代もありましたし、米国でも州によってはつい最近まで一夫多妻制を認めていたところもあります。
相手の感情を考えるのは大事です。しかし、今と価値観が違った時代を生きた人を今更「人種差別」として批判するのは違うのではないか、と思えてしまいます。
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