日米租税条約第20条の廃止、教育機関等からの報酬は課税
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登 氏
例としてAさんは日本から米国の大学に研究者としてJ-1ビザで渡米しました。大学からはその研究の報酬を受け取り、W-2も発行されたとします。
このようなケースですと以前の提出書類は米国源泉所得のみを申告するForm 1040NRに加えて、 非居住者として米国源泉所得のみを申告するための Form 8843、そして2年間は米国源泉所得があっても租税を免除する日米租税条約第20条を適用するためのForm 8833の添付が必要でした。
その根拠となっていたのが日米租税条約第20条(1)です。
「一方の締約国内(米国)にある大学、学校その他の教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の子締約国内(米国)に一時的に滞在する個人であって、他方の締約国(日本)に於いて第4条(1)にいう居住者に引き続き該当するものがその教育又は研究につき所得する報酬については、当該一方の締約国(米国)に到着した日から2年を超えない期間当該一方の締約国(米国)において租税を免除する。(カッコ内の国名は筆者が便宜上挿入)」
ところが2019年11月1日以降はこの第20条の規定が廃止されました。そして源泉徴収されるものに関しては2019年11月1日より、その他の課税対象所得に関しては2020年1月1日より適用されることになりました。
従ってJビザであっても米国源泉所得がある限りはForm 1040NR Line 1aでの申告とForm 8843の添付が必要となります。
このAさんの場合は米国源泉所得があるため、もし2019年に入国しているのであれば、2019年度と2020年度はForm1040NRとForm 8843で米国源泉所得のみを申請することができます。
然し、3年目からはForm 8843によるNR Statusは使えなくなりますので、米国居住者としてForm 1040で全世界の収入を米国で申告しなければなりません。
<参考>
日米租税条約改定議定書:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000003672.pdf
源泉所得税の改正のあらまし:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0019008-055.pdf
From 8843 (Statement for Exempt Individuals and Individuals With a Medical Condition): https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f8843.pdf
以上
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