スペインのオリーブオイル産業にて成功している田中富子
この記事は、何年も前にスペインに行き、徐々にスペインのオリーブオイル業界で有名な専門家になった非常に頭の良い日本人女性についてです。私(スティーブン・ギャン)と、信じられないほどのフロンティア精神を持ったこの素晴らしい人物とのインタビューをご覧ください。
ギャン:大変お久しぶりです。田中さんとは1990年初期に日本モトローラで一緒に働きましたね。田中さんは通信機営業部、私は通信機経理本部に所属していました。FacebookとLinkedInを通して再びこの様にお話できることを嬉しく思います。田中さんがスペインに住み、そこで働いていると知った時にはとてもびっくりしました。 田中さんのスペインでの武勇伝(笑)の記事を是非私のステラジャーナルに載せたくて、インタビューをお願いしましたが、受け入れて下さって本当にありがとうございます。早速ですが、いつ頃からどんな理由でスペインに関心を持たれたのですか。
回答:これは本当に良く聞かれますが、はっきり言って偶然が重なっただけなのです(笑)。日本モトローラを辞めることを決めた時、昔同じ事業部にいた上司の上司がちょうどアルゼンチンにいたんです。日本からアルゼンチンは遠いし、バケーションでリラックスしたいなと思ったので、その上司に1か月間世話になっていいかと聞いたら、すぐにOKの返事が来て。日本に住んでいましたから、当時はまだ計画性がかなりあったので(笑)、滞在中何をしようか考えました。学生の時第二外国語でスペイン語を習ったので、じゃー、スペイン語やろうかなと思って。どうせスペイン語やるのであれば、アルゼンチンの後はスペインに行こうと思いました。それでスペインに来たんです。当時はちょっと都会に疲れていたというのがあったので、3か月滞在するつもりだったスペインでは田舎に行きたいと思いました。日本に戻ってまた新しい職に就こうと思っていたので、田舎で生活してリラックスしようと思ったわけです。友人の友人でスペイン語の先生がいたので、その人に田舎でスペイン語習うのであればどこがいいか聞いたら、サラマンカかセビージャがいいと言われました。ゆっくりしたいというのが希望だったので、学生が多そうなサラマンカはやめて、セビージャに来たというわけです。その後住み続けたのは、まあプライベートな理由は避けさせてもらって(笑)、結構面白そうな市場だなと感じたんです。2000年に3か月いて、その後学生ビザを取って2001年に再度来たわけですが、当時のセビージャは、私にとって日本の昭和を彷彿させる土地でした。これからの場所じゃないかとなんとなく感じたのです。
ギャン:最初に田中さんの住んでいたセビージャ市はどんな町でしたか。
回答:セビージャはスペイン南部に位置し、アンダルシア州の首都です。町に着いた時、とても華やかな所だなという感じがしました。セビージャはスペインがアラブ人に占領されていた時代首都だった時もあり、城下町のような雰囲気があります。クラシックで伝統行事を重んじる土地です。15年間セビージャにお世話になりましたが、私にとってはスペインの故郷です。今でも、プライベートで訪れる場所としては一番回数が多い場所です。
ギャン:現在、田中さんはマドリッド市に住んでいらっしゃるのですね。どしてそこに引っ越ししましたか?マドリッド市はどの町ですか?
回答:セビージャに住んでいる時からずっとマドリードに引っ越ししたくて、機会を狙っていました(笑)。セビージャはもちろん好きですけど、ある時から“見えない天井がある”感覚を持ち始めました。そこを突き破りたいのに、見えない天井なので突き破れないのです。マドリードは、私的に天井はありません(笑)。自由で、人種的ジャンルがない都市だと思っています。マドリードは都市として全てウェルカム、全て受け入れるよという感じがします。物理的にもスペインの中央に位置するので、移動も楽ですし。後は、私はUKやアメリカの音楽が好きなのですが、セビージャまで来てくれるアーティストは少ないわけです。それがマドリードは結構来る。それも1つの大きな要因です(笑)。
ギャン:Facebookで田中さんは数年間でスペインのオリーブオイル業界で非常に活発的に参加していらっしゃることを沢山拝読いたしました。徐々に田中さんはオリーブオイル業界有名人になっているそうです。どんなきっかけでオリーブオイル業界の仕事が始まりましたか?そうしたら、現在の活動、商売など具体的に話していだきますでしょうか?
回答:これも偶然ですが、長くなりますよ(笑)。セビージャでは語学学校に行って、その後モトローラでやはり上司だった佐藤義規さんに頼んでホームページを作ってもらい、セビージャで盛んなフラメンコ(踊り)や語学学校クラス、宿泊施設の斡旋、そして日本のフラメンコ衣装などを扱うショップから、スペイン側の買い付けを頼まれて、それで生計を立てていました。その後、C to CではなくB to Bをやりたいと思うようになり、自営業ビザの申請をしました。1年半かかってビザは取得できました。ビザ取得後、何をしようかと考え、周りを見渡すとワインやオリーブオイルなどの豊かな食品がスペインにはたくさんあることに気づきました。私はお酒が全く飲めないので、味がわからないものを取り扱いたくないなと思い、それではオリーブオイルはどうだろうと思ったのです。そこで、アンダルシア州輸出機構のHPから必要な情報をダウンロードしました。当時はそれらのダウンロードが可能だったのです。
そして、掲載されていた日本の全輸入業者さんにアプローチレターをメイルしました。ありがたいことに、数社返事をいただいて。そのうちの1社がある特徴のオイルを探しているというので、セビージャの食品見本市にそのオイルを探しに行きました。そこで、私の運命を決める生産者に会ったのです。その生産者の方は私に必死でオリーブオイルについて語り始めたんです。オリーブオイルの歴史や採油方法、テイスティング、研究されている内容などについて、とにかく一生懸命に語ってくれて。すっかりオリーブオイルの魅力にはまり、早速同じ週にその生産者を訪問しました。畑と採油所を見せてもらい、また熱くオリーブオイルについて語られました(笑)。オリーブオイルは、市場に出す前に必ず官能分析(かおりと味の分析)を通らないといけない唯一の製品です。その官能分析によってエキストラバージン、バージンのようなカテゴリーに分類されるのです。そのような背景のある製品を是非勉強したいなという気持ちが頭をよぎったので、彼らにどこかに勉強できるところがないか聞いたんです。軽い気持ちで聞きました。そうしたら、“ちょうどいいクラスがあるから一緒に受ければ?”と言われ、紹介されたのが、なんとハエン大学の専門コースだったんです。
どうしようか数日考えたと思います。当時セビージャに住んでいたし、クラスは金曜日と土曜日しかなかったので、毎週通わなくてはならない。スペインは夏や春に休みも多いので、約1年かかるコースでした。あと、お金が払えるかが、ものすごく不安でした。フラメンコの仕事や斡旋の仕事は食べていけるのがやっとだったので、それはもう、ものすごく考えました。でも、心の奥底から、“これはやるべき。やらないといけない”って声がずっと聞こえていて、もうどうにでもなれって思って、そのコースに入ることに決めたんです。日本には“清水の舞台から飛び降りる~”という慣用句がありますが、まさにそれです。コースに入ったら、オリーブオイルの魅力にすっかり取りつかれました(笑)。先生の言っていることが難しすぎて理解できなかったので、録音して何度も聞きました。スペインにはたくさんのオリーブ栽培や採油、テイスティングに関する公式研究所がたくさんあって、そこに知識と英知が集まっていることに驚きました。
コースが始まってからすぐに日本の輸入業者さん数社とお仕事をさせてもらうようになり、、、もちろんそれもアプローチレターを出しまくって、お返事をいただいたお客様です。
その後、2013年にハエン県で日本人向けにオリーブオイルのコースを開催しました。ハエン大学のコースをやった時の感動を日本の皆さんにも感じてほしいと思ったからです。私の師匠の1人であるアヌンシア・カルピオ氏にコースの構成を考えてもらい、専門の講師を外部からも呼びました。そこに13人の日本人が参加してくれました。本当にありがたいことです。奇跡だと思いました。その後くらいだったかと思いますが、スペインで開催されるオリーブオイルの品評会に審査員として呼ばれるようになりました。現在は、オリーブオイル輸入やオリーブに関するコンサル、栽培に関する仲介、オイルのブレンド構成などを中心に従事させてもらっています。そして、スペインや日本での講演、日本では小豆島にて開催されたオリーブサミットに呼んでいただきました。これも、皆オリーブを通じてお知り合いになることができた方たちのおかげです。また、スペイン外のヨーロッパで開催されるオリーブオイル品評会にも呼ばれるようになっています。
2020年にパンデミックになり、スペインでは厳しいロックダウンが行われました。その際にひらめいたのが、オリーブ文化をオンラインで世界に普及させることです。近年のオリーブ栽培とオリーブオイル消費の発展を考慮すると、スペインで研究され蓄積されている知識、英知が世界で必要になるはずだと思ったのです。その後、私が尊敬するスペインのオリーブオイル研究者3名と共に協会を申請し、2021年11月末に無事に登録できました。協会を通じて、スペインのオリーブ栽培から採油、テイスティングにおける知識を世界に広める組織です。協会の名前はArigatOlivo(ありがとリーボ)で、日本語でオリーブに対しての感謝の気持ち=“ありがとう”と、スペイン語でオリーブ=“オリーボ”を掛け合わせた造語です。
まずは日本人向けにエクスクルーシブオンラインコースを開催しました。開催するまで本当に色々なことがありました。まとめると、それらは全て私の未熟さが招いたものばかりでした。開催最低人数は埋まらなかったのはもちろん、私の師匠である他の協会員たち、そして受講者の方たちとの関係、初めてのことだらけで、それに直面する恐怖、、、今考えるとよくもトライしたなと思うことばかりです。私は人に良いアドバイスをされても、自分で実感しないとそれがものにできないのです。自分の思いつくままに暴走してしまいます。なので、たぶん人よりも物理的にも精神的にもダメージは大きい。頭悪いんです(笑)。でも、実際にコースが始まるまでに、人間的にはかなり容量が増えました。お金についての考え方も変わりました。短期間に自分の枠をかなり広げることができました。
開催後も想定外ばかりのことが起こり、絶望、挫折、許容、仕切り直し、トライの繰り返しでした。現在は、一人でも多くの世界の人たちにオリーブオイルについて知ってもらうべく、録画した各クラスを再編集して、スペイン語、日本語、そして英語バージョンにて、どこかのプラットフォームに掲載しようと取り組んでいます。私が今まで受けてきたコースやクラスは、あくまでもこの業界にいるからこそ受講できたわけですが、業界にいなければそれがあることすら知らないわけです。それを皆の手の届くところに持っていきたいと思っています。また、前記したように、世界的にオリーブ栽培が広がり消費も増加しています。それにより、プロの方たちには情報や知識が必要になります。それがオンラインで簡単に観れるようになればいいかなと思うのです。その後、実際にスペインに来てもらい、栽培や採油、テイスティングを見学や体験してもらえる機会も持てればいいかなと。それによってオリーブオイル文化は広がるのではないかと。今のところはそう思っています。
ギャン:オリーブオイル業界での将来のゴール(目標など)は何ですか?
回答:私の目標は世界へオリーブ文化を普及することです。そのために協会を設立したわけです。前質問4の最後の部分でお話していますが、今、協会で開催したクラスを日本語、スペイン語、英語バージョンにて、どこかのプラットフォームで掲載し、その後、少しずつクラスを増やしたいと思っています。次回は、栽培に関するクラスを2つ3つできたらいいかなと考えています。
スペイン→世界ということではなく、世界→スペイン、つまりスペインも十分世界から学ばなくてはならないことがあります。それは例えば、マーケティングとかですが。このように、協会が世界のオリーブオイルネットワークのキーポイント的な存在になれればよいかと思っています。資金が関係なかったら全部同時にやりたいですが、そうはいかない現状です。なので、少しずつやっていくしかありません。というのが今のところ人間の私が考えている目標です。進んでいくうちに方向性は変わります(笑)。
ギャン:田中さんは良い意味で個性豊かで、パワフルな開拓者だと思います。今日はお忙しい中、スペインでの生活、お仕事そしてスペインの現状について聞かせていただきまして本当にありがとうございました。これからの更なるご活躍とご成功を期待しています。
回答:ありがとうございます。今まで物理的な目標や結果を書きましたが、何よりも私という人間を受け入れ、人間的に大きくさせてもらっているオリーブオイル業界、スペイン、日本、地球、宇宙に感謝したいと思います。そして、今までずっと何かある度に相談に乗ってもらっている佐藤義規さんに心より感謝を述べたいです。これからもどんどん枠を外して、たくさんのことを経験させてもらいたいと思っています!
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