SDGsという言葉をご存じですか?

CDH会計事務所
国際税務コンサルタント
ハラー 基江 氏

SDGsという言葉をご存じですか?コロナ禍で3年も日本を留守にしていましたが、今年に入りやっと一時帰国が実現し、通算3か月、弊社の日本オフィスのある名古屋市に滞在してきました。その間に日本のテレビ番組・CMをシャワーのように浴びまして、なかでもEテレで放送されていた『SDGsのうた』というのが耳から離れません。

2030年までに達成する国際目標。あと8年しかない!

SDGsはSustainable Development Goals (持続可能な開発目標)とわれるものです。歴史は30年前の1992年6月まで遡ります。ブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットで、「アジェンダ21」という、人類の生活改善と環境保護を目的としたグローバルなパートナーシップを構築するための行動計画が採択されました。その後、ニューヨーク国連本部で開かれたミレニアムサミットでの「ミレニアム宣言」(2000年)、南アフリカで開かれた世界サミットでの「ヨハネスブルグ宣言」(2002年)を経て、2015年9月に国連持続可能な開発サミットで採択されたのが、“2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標”です。目標は17個決められ(後述)、その下に目標を実現するためのターゲットがなんと169個決められました。2015年というのは開発の世界では重要な年で、主要な協定がいくつか採択された年です。その中には「仙台防災枠組み」や「パリ協定」があります。

お気づきの通り、歴史は30年もさかのぼりますが、この目標は2030年までに実現する目標です。そして現在2022年。あと8年しかありません。だから、Eテレを見た時には驚きました。きっちり17の目標に合わせて17個のテーマソングが作られPRされています。「ママが好きそうな言葉ばかりが入ってるよ」と子供に教えられたのがきっかけで知ったテーマソング。それは嬉しい驚きでした。

ところで、この取り組みは進んでいるのでしょうか?

※国連の活動に興味がありましたら、UNのFacebookページをご覧ください。https://www.facebook.com/SustDev/ 

泥臭い当時からクリーンな今へ 

「今になってこんなにPRされているの!?」というのが歌を聞いた時の驚きの第一声でした。なぜなら、この話は1992年までさかのぼるし、2015年の国際サミットで満場一致で採択された国際目標ではありますが、当時の日本では全くと言っていいほどパブリシティしていなかったと記憶しているからです。

というのも、私自身は、当初のアジェンダ21やミレニアム宣言がカッコいいと思い、最先端の権威であった大学院の国際開発研究科の門をくぐった者です。が、意気揚々として女性の地位向上や保健衛生の研究に明け暮れていた当時は、地味に開発途上国で頭にハエがとまりながらの現場でもって、泥臭い実地調査に励むというような時代でした。何年もの月日が流れた現在、これほどまでに日本のメディアにクールに取り上げられ、クリーンなかわいいキャラクターでプロモーションされているのを目の当たりにしたときは、なんとなく浦島太郎の気分でした。

Image credit: SDGsのうた | ひろがれ!いろとりどり (nhk.or.jp)

Sustainable Development Goalsってなに?

上記のリンクをクリックしてみてください。テーマソングの動画が紹介されています。国際目標である「持続可能な開発目標」のゴールは17個と決められているわけですが、「貧困をなくす」とか「飢餓をゼロに」といわれると、わたくしごととして受け止めることが難しいと思われるかもしれません。そこで是非見ていただきたいのは、目標を実現するための169のターゲットです。非常に具体的なので、17のゴールがよく理解できるはずです。

https://sustainabledevelopment.un.org/topics/sustainabledevelopmentgoals)。 

ご参考に、外務省の説明文を転記します:

持続可能な開発目標SDGsエス・ディー・ジーズとは

持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

17の目標

1.     貧困をなくそう

2.     飢餓をゼロに

3.     すべての人の健康と福祉を

4.     質の高い教育をみんなに

5.     ジェンダー平等を実現しよう

6.     安全な水とトイレを世界中に

7.     エネルギーをみんなに そしてクリーンに

8.     働きがいも経済成長も

9.     産業と技術革新の基盤を

10.  人や国の不平等をなくそう

11.  住み続けられるまちづくりを

12.  つくる責任 つかう責任

13.  気候変動に具体的な対策を

14.  海の豊かさを守ろう

15.  陸の豊かさを守ろう

16.  平和と公正をすべての人に

17.  パートナーシップで目標を達成しよう 

会計業界、金融業界はどう関わっているの?

あと8年しかない現在、いったいどのくらい推進されているのでしょう? 

「SDGs宣言」をしている日本の金融・証券業界が、どのようにSDGsに取り組んでいるかを紹介したいと思います。 

地銀ではいち早く、滋賀銀行が初めて「しがぎんSDGs宣言」を表明し、SDGsに貢献する事業を支援する「ニュービジネスサポート資金」という融資を始めました。

税金関係でいうと、地域の課題解決に対する取り組みとして、個人レベルのESG投資ともいえる「ふるさと納税」や、この企業版として2016年から始まった「地域創出応援税制」もその一例です。同制度では、国が認定した地域公共団体の地方創出プロジェクトに対し、企業が寄付を行った場合に、寄付金の3割が法人関係税から税額控除され、企業による地域創出への参加を促しています。https://www.env.go.jp/content/900498955.pdf

そして、興味深いのは、地域通貨による交流促進です。「共感コミュニティ通貨 ユーモeumo (ë)」という、ユニークな実証実験が2019年9月から始まっています。今までの地域通貨とは違い、都会の消費者と地域の生産者をつなぎ、共感を広げることを目的として、「各地の加盟店まで行かないと使えない。」「有効期限がある。」などのルールを設け、地域に寄り添い、使うほど幸せになる手段としての通貨を目指しています。キャッチコピーは『円から縁へ交換から共感へ。だいすきなあのお店で使うスマホ決済アプリ』。https://currency.eumo.co.jp/ 

一方、アメリカの会計業界において、会計の専門家がSDGsに影響を与えることが出来る分野は、企業の社会的・環境的影響を測定・分析・報告するサステナビリティ会計や、企業に関する環境・社会・ガバナンスに関する情報に注目する投資家を念頭においた、持続可能な責任投資などです。投資家は短期的な考え方をする傾向があるかもしれませんが、持続可能性は本質的には長期的な概念です。従って、地域社会や環境の持続可能性を達成するには、持続可能性を正確かつ包括的に測定できるようトレーニングを受けた会計士が必要あり、会計業界でもホットな話題となっています。また、こういったものは法人のSDGsに注目が行きがちですが、企業のサステナビリティ会計だけでなく、個人納税者レベルでのサステナビリティをサポートすることも、会計事務所の使命であると思います。

持続可能とは、持続していくことを可能にするために「サポート」してあげるだけでなく、サポートされる人・社会・国が「自らの力」で持続していく力を得ることが究極的な目的です。開発の世界では「自助努力」があって初めてサポートの効果が出たことになります。つまり、会計事務所におきかえると、会計事務所のSDGsのひとつの成功の形は、クライアントが自助努力でもって、自らの足で歩み続けている“サステナブルロードマップ”を提案したときだと感じます。

【お知らせ】 CDHクロスボーダーファミリープラクティスでは、このような考え方に共感してくださる方を募集しています。共感いただける方はご連絡ください。

記事に関するコメントは、ハラー基江mhaller@cdhcpa.comまで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

CDH会計事務所クロスボーダーファミリープラクティスに関する情報は、https://www.cdhcpa.com/ja/personal-tax/ のページですべてアクセスできます。YouTube、Facebook、無料のオンラインでのコンサルテーション予約、遺産、永住権の放棄、出国税、Form 1040、税金シミュレーション、米国外金融資産報告などの分野ごとのオンライン質問フォーム、月次のニュースレターのサインアップなどがございます。ぜひお気軽にご利用ください。

出典:

以上

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