男女の賃金格差について

アメリカの女子ワールドカップに出場した選手がアメリカサッカー連盟を相手取って2016年に始めた「男女同一賃金」の訴訟が6年目にして2022年2月に和解が成立しました。集団訴訟に加わった選手に対して、合計2400万ドル($24 million)が支払われることになりました。
アメリカの女子サッカー代表チームは、女性のサッカーワールドカップが始まった1985年以来、4回も優勝しているのに対し、男子のサッカー代表チームは1930年にワールドカップが始まって以来、優勝はおろか、ベスト4にも入っていません。にもかかわらず、女性のサッカー選手に支払われる報酬は男性の40%も低いそうです。(参考文献:“U.S. Soccer and Women’s Players Agree to Settle Equal Pay Lawsuit”, New York Times, February 22, 2022, )

また、賞金は、2018年の男子ワールドカップでは、賞金の合計は4億ドル($400Million)、そのうち決勝での勝者フランスには3800万ドル($38Million)支払われたのに対し、2019年の女子ワールドカップの合計賞金は3000万ドル($30Million)優勝国のアメリカへの支払いは400万ドル($4Million)と、10分の1以下でした。)(参考文献:“American Women Soccer Players Settle Suit vs. US Soccer for $24M”, Napa Valley Register, February 22, 2022, )

ただ、確かにアメリカではサッカーはアメリカン・フットボールやバスケット・ボールに比べて人気のないスポーツかもしれませんが、世界的に見ると、チケットの売り上げ、テレビの視聴率などダントツに男性のチームの方が高く、国際サッカー連盟(FIFA)から支払われる賞金は、収益に基づいている、という反論もあります。

ヨーロッパで人気スポーツの男子サッカー選手は、プロリーグで多額の報酬をもらっているため、このくらいの報酬を出さないと、そもそもワールドカップに出場しないのかな、とも思います。海外にも放映権を売れるプロリーグなのですから、プロリーグが試合を休みにまでして選手をワールドカップに出場させないかもしれません。

全く同じ土俵で勝負している訳ではないスポーツ選手の給料は何が本当に「同一労働、同一賃金」であるのかは、意見が分かれる処だと思います。ただ、現在、米国では男女の賃金格差を減らそう、という動きがあるのは事実です。

その一つとして、私の住んでいるイリノイ州でも、仕事の面接時に現在・過去の給料を聞いてはいけない、という法律があります。2022年2月3日現在、22の州で同様の法律があります。(参考文献:“Salary history bans,” )

なぜ過去の給料を聞いてはいけないか、というと、これもやはり男女の給料格差を減らすためです。現在・過去の給料を聞くと、仕事のオファーを出すとき、完全に「仕事に対しての給料」ではなく、「過去の給料を参考にした給料」をオファーする場合が多い、という考えからです。雇用主としては、少しでも安く従業員を雇いたいため、仕事に対して年俸4万ドルをオファーするつもりであっても、面接した人の現在の給料が3万ドルであると知ると、3万ドルの10%増しの3万3千ドルでオファーを出せば十分だ、というような考えになるからです。元々女性の平均給料の方が安いのに、現在・過去の低い給料を参考に新しい給料を決定すると、いつまでたっても男女の格差が是正されないからです。(看護師、保育士、家政婦など、歴史的に女性が多い職場の方が賃金が低かった、ということは良く知られていることです。)

事実、フルタイムで一年中働いている男性の昨年の給料を$1とすると、同様の条件の女性の給料は83セントだった、ということで、バイデン政権も是正の方向に動き始めました。(参考文献:”White House Announces Steps to Promote Pay Equity,”  SHRM, March 15, 2022, )

では、同じ土俵(職場)で人を雇う場合、雇用主は何をすべきでしょうか?

  • 明確なジョブディスクリプションを作成する。

  • ジョブディスクリプションによって、給料体系を決める。

  • 経験によって、どのくらいの給料を上乗せするか決める。

  • 現在働いている人のジョブディスクリプションも定期的に見直す。

とにかく、同一労働・同一賃金の原則を守りましょう。

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