Finalized Section 2801 出国税対象者からの贈与に対する課税
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
<Title 26, U.S. Code Section 2801>
この出国税法Section 877. Expatriation to Avoid Taxに続いて出国税法Section 877A. Tax Responsibilities of Expatriation が2008年に可決されました。その時に一緒に可決されたもう一つの税法がSection 2801. Imposition of Taxです。
2015年9月10日に規制作成案の通知を発表し、執行されていない提案規則の形で存在していましたが、10年目の2025年1月10日にそのRegulationの最終規則が発表されました。この最終規則は2025年1月1日以降にCovered Expatriateから受け取った贈与及び遺贈に対して適用されます。
この税法の特徴は後述する出国税の対象となったCovered expatriateから受けた贈与及び直接的・間接的な遺贈に関し2801税を課すというものです。米国連邦税である贈与税及び相続税は贈与者及び被相続人側が支払うものですが、この2801税は日本式に税金を受領者側に課すというものです。
対象となるCovered expatriateからの贈与または遺贈を受けた米国人は、暦年中に受け取った贈与または遺贈の合計額を、暦年に有効な受贈者ごとの控除額で減額して、第 2801 条の税額を計算します。(2025 年度の年間控除額は 19,000 ドル)。但し、贈与税の対象とならない配偶者等への非課税額はそのまま適用されます。
受贈者控除額を超える金額に、贈与の年に適用される相続税または贈与税の最高税率を掛けます。現在、相続税および贈与税の最高税率は 40% です。
この2801税は、外国に支払われる相続税または贈与税によって減額される可能性があります。
<Covered expatriate>
米国籍離脱者及び過去15年間の課税年度で8年以上グリーンカードを保持していた長期永住権保持者はSection 877(a)(2)により下記の何れかに該当した場合はCovered expatriateと見做され、譲渡益の時価評価税、繰延課税資産の源泉課税という出国税が適用になります。
(1)放棄前の5年間の平均連邦所得税額が$206,000 (2025年度) を超える
(2)放棄日の全世界純資産(債務も考慮)が200万ドルを超える
(3)放棄前の5年間の連邦個人所得税申告納税への準拠について宣誓証明が出来ない
<注意>
米国籍離脱者及び長期永住権保持者はCovered expatriate でなくてもForm 8854 (Initial and Annual Expatriation Statement)にて放棄時の資産状況を開示報告しなければなりません。
申告書Form 708 (US Return of Tax for Gifts and Bequests Received from Covered Expatriates) の具体的な内容についてはまだIRSからの発表はありません。
<例1>
AはCovered expatriateで、米国市民である息子のBに贈与をします。Aはもはや米国人ではありませんが、国外に移住した時点でCovered expatriateだったため、Bは 2801 税の対象となり納税義務を負います。
<例2>
CはCovered expatriateで、米国市民である息子のDが所有する国内信託に贈与をします。対象贈与に対する税金の支払いは信託が責任を負います。
<例3>
EはCovered expatriateで、外国信託に贈与をします。外国信託はEの米国市民である娘のFにお金を分配します。この分配は2801 税の対象となり、Fは納税義務を負います。
このようにグリーンカードの取得者は取得年度を含め8年以上保持すると市民権放棄者と同様の出国税の対象となってしまいます。折角米国で納税しながら築いた財産に再度課税されないように、またもし課税されたとしてもそれを最小限度に留められるように、今から準備を始められることをお勧めいたします。
以上
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