シャルセキュリティの棚ぼた防止条項廃止
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
厚生年金の受給を理由にソーシャルセキュリティ受給額が減額されていた、棚ぼた防止条項が廃止されました。
<米国社会保障庁:SSAのホームページより抜粋>
Pensions and work abroad won’t reduce benefits
We no longer reduce your benefits because of pensions from jobs that didn’t pay into Social Security.
How this affects your benefits
Previously, we reduced payments for people with these types of pensions through the Windfall Elimination Provision (WEP) and Government Pension Offset (GPO).
If you're already getting benefits and we had reduced your payments because of WEP/GPO, we’ll add that amount back to your monthly payment. We’ll also pay you back for the amount we withheld since January 2024. We’ll share a repayment timeline soon.
If you haven’t applied yet, your benefit won’t be reduced.
2025年1月5日バイデン大統領がThe Social Security Fairness Actに署名し、米国年金減額制度のWindfall Elimination Provision棚ぼた防止条項:WEPとGovernment Pension Offset: GPOが廃止されました。今回の決定は日本の厚生年金受給者で既にWEPの減額を受けている人のみならず、将来日本の厚生年金と米国年金を受給予定の方にも良いニュースです。
<Windfall Elimination Provision>
政府関係機関や米国以外の雇用主等のSocial Security Taxを源泉徴収しない雇用主のもとで勤めた場合、年金額をその雇用に基づく老齢年金や障害年金の金額によって減額調整する規定
<Government Pension Offset>
連邦政府や地方自治体の公務員年金を受け取っている人が配偶者や遺族として受取る米国年金を減額調整する規定
これらの規定で対象となるのは;
多くの州の教師、消防士、警察官
公務員退職年金制度の対象となる連邦職員
外国の社会保障制度の対象となっていた人々
この恩恵を受ける対象者は320万人以上とのことです。日本国籍の方が米国からソーシャルセキュリティを受給した場合、日本の年金受給に影響はありません。しかし日米両方から年金を受給する場合は高額所得レベルで米国のソーシャルセキュリティを30年以上支払った方を除いて、米国の年金受給額が減額されていました。減額される金額は2024年度では日本の厚生年金受給額の月額の半分か587ドルのいずれか低い額となっていました。
既にWEPやGPOにより減額を受けている受給者の減額分の支払いは、2024年1月分の米国年金支給まで遡及、それ以前には遡らないとのことです。
ここからはSSAのサイトからの重要な情報です。
<遡及給付及び新しい給付額について>
2025 年 2 月 25 日よりSSAは遡及給付の支払いを開始し、WEP および GPO によって給付が影響を受けた人への月々の給付金を増額します。
この法律により受給者に遡及給付金が支払われる場合、受給者は 3 月末までに SSA が記録している銀行口座に 1 回限りの遡及給付金を受け取ります。この遡及給付金は、WEP および GPO が適用されなくなる月である 2024 年 1 月までの給付額の増加分をカバーします。
ソーシャルセキュリティは 1カ月遅れで支払われます。影響を受けていた受給者は2025 年 4 月から新しい月々の給付額を受け取り始めます(2025 年 3 月の給付分)。
月々の給付金が調整される人、または遡及給付金を受け取る人は、SSAから給付金の変更または遡及給付金を説明する通知を郵送で受け取ります。受給者は、2 通の郵送通知を受け取る場合があります。1 通目は WEP または GPO が記録から削除されたとき、2 通目は毎月の給付額が新しい毎月の支払い額に合わせて調整されたときです。郵送通知を受け取る前に遡及支払いを受け取る場合もあります。
遡及支払いの状況については、 4 月まで待つことをお勧めします。これらの支払いは 3 月中に段階的に処理されるためです。受給者は4 月の支払いを受け取るまで待ってから、毎月の給付額について SSA に問い合わせてください。
<必要なアクション>
退職または障害のある労働者の給付を受ける資格があり、現在 WEP によって給付が削減されている場合、または配偶者または生存配偶者の給付を受ける資格があり、現在 GPO によって給付が削減または廃止されている場合:
SSA が郵送先住所および/または直接預金情報をファイルに保存していることがわかっている場合は、現時点では他に何もする必要はありません。
SSA がファイルに保存している郵送先住所および振込先銀行情報が正確で最新のものであることを確認する場合:
個人の my Social Security アカウントを確認してください。
www.ssa.gov/my account にアクセスしてサインインするか、アカウントを作成してください。
アカウントを作成できない場合は、1-800-772-1213 に電話して、ファイルに保存されている情報を確認してください。
<その他>
米国勤務者の納めるソーシャルセキュリティ税はその配偶者の受給(Spousal Benefits)にもつながります。つまり奥様が米国に居住されずご主人が単身赴任だった場合でも奥様には配偶者受給資格があるということです。但し、受給にはソーシャルセキュリティ番号が必要です。また、10年以上の婚姻関係が必要で、もし離婚しても再婚していなければご主人の年金を受け取る資格は維持されます。
最後に、長年に渡りWEP廃止活動にご尽力された日本の海外年金相談センター市川俊治様に感謝の意を表したいと思います。
石川俊治様のサイト:http://nenkinichikawa.org
参照となるWEBのサイト:https://www.ssa.gov/benefits/retirement/planner/wep.html
以上
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