マイナンバーカード、海外転出者でも申請更新可能に。5月27日からスタート

CDH会計事務所
国際税務コンサルタント
ハラー 基江 氏

マイナンバー法等改正法の関係規定が2024年5月27日に施行されることに伴い、マイナンバーカードに関連して以下のような改正があります。デジタル庁「河野大臣記者会見(令和6年4月9日)」の中で述べられたポイントは4つ。4点を簡単にまとめたあと、特に海外(日本国外)転出者に関わるであろうポイント1点目と4点目について補足を述べます。

まずは、マイナンバーとは何かについて正しい知識をこのリンクから:

デジタル庁『よくある質問:マイナンバー(個人番号)について』

河野デジタル大臣の記者会見におけるマイナンバー制度改正の主なポイントは以下の通りです:

デジタル庁『河野大臣記者会見(令和6年4月9日)』

1点目:海外(日本国外)でのマイナンバーカードの利用

  • 2024年5月27日から、海外(日本国外)に赴任や留学している日本人もマイナンバーカードを失効することなく継続して利用可能になります。

  • 在外公館でのマイナンバーカードの申請や受取も可能となります。

2点目:「かざし利用」の導入

  • 暗証番号を入力せずに、マイナンバーカードをかざすだけで利用できる「かざし利用」が可能になります。

  • これにより、図書館カードや避難所の入退場記録などでの利用が推進されます。

3点目:国家資格への適用拡大

  • 2024年5月27日から、医師、保育士、税理士、理容師、美容師、建築士など、約80の国家資格がマイナンバー利用事務に追加されます。

  • 資格者の手続きがマイナポータルから可能になり、添付書類の省略が実現されます。

4点目:公金受取口座の登録方法の拡充

  • 公金受取口座の登録方法が拡充され、通帳の写しなどを提出する必要がなくなります。

  • 給付金の受け取り口座として、マイナンバーと銀行口座を紐付ける登録方法が拡充される予定です。具体的には、年金受給口座(年金を受け取るための口座)をそのまま給付金の受け取り口座(公的な給付金を受け取るための口座)として登録できるようにし、デジタルに不慣れな高齢者も簡単に登録できるよう配慮されるとのことです

  • ※公金受取口座と混同されやすい口座管理法についても説明がありました。口座管理法は、希望者が金融機関にマイナンバーを任意で届け出て口座に紐付けるもので、災害時や相続時に口座情報を迅速に確認できる制度です。これは公金受取口座とは異なるものであり、金融機関が無断で口座にマイナンバーを紐付けることはありません。

対象者と手続き方法

細かな手続きの詳細は5月27日までに順次、総務省、外務省から公表されるとのこと。ウェブサイトも随時更新されています。この施行に影響を受ける海外居住者をタイプ別に整理します。

<タイプ1> 現在マイナカードを持っている人。基本的にこのタイプは現在日本居住者。場合によっては転出届を出していない海外居住者(後述のタイプ5)。このタイプはこれまでは国外転出(=“住民票を抜く”、海外転出届を出す)をするときに(付番された番号はなくならないが)カードを失効させられていたが、国外転出する前にマイナカードを国外転出用に切り替える申請をだすことで、国外転出後もマイナカードを引き続き継続できるようになります。

地方公共団体情報システム機構『国外転出者向けマイナンバーカードの申請・受取方法(新規交付)』

<タイプ2> 既にマイナンバーを付番されているが、カードは失効している人(国外転出をしたために失効した場合等)。カードの申請手続きが在外公館で可能。パスポートなどの本人確認書類が必要となります。

地方公共団体情報システム機構『マイナンバーカードを国外で利用する』

<タイプ3> 2015年10月5日以降に国外転出した人で、マイナカードを持っていない人。マイナカードの新規申請・受け取りが国外の在外公館で可能となります。同じく、パスポートなどの本人確認書類が必要となります。

地方公共団体情報システム機構『マイナンバーカードを国外で利用する』

<タイプ4> 2015年10月14日以前に国外転出をしており、マイナンバー付番やカードを受け取ったことのない人。住民票を抜いて10年以上日本を離れている場合、今回の対象外となるようです。このタイプの人がマイナンバーを取得する場合、日本へ渡り住民票を入れてから申請をしなければならないのが現状と思われます。

地方公共団体情報システム機構『マイナンバーカードを国外で利用する』

<タイプ5> 海外在住者だが住民票は抜いておらず日本国内に住民登録をしたままの人。<タイプ1>と同類。この場合も申請が可能で、ただ、カード受取のためには本人が日本の住民登録のある市区町村へ来庁する必要があるとのこと。 

地方公共団体情報システム機構『申請方法について』

日本所得に関する納税および相続の手続き

海外居住者のなかには、日本での所得があるためマイナンバーのある・なしに関わらず日本で納税をなさっている方もおられるでしょう。また、日本で相続が発生し、その手続きに大変な思いをされた方もいらっしゃると思います。

相続手続き時には、亡くなった方(被相続人)のマイナンバーを相続税の申告書に記載する必要はなくとも、この方のマイナンバーが金融口座と紐づいていると、相続手続きの際にその方の保有されていた口座確認が簡便化できるという観点で、「もしも」の時に備えて口座とマイナンバーを紐づけるという考えもあるかもしれません。

一方で、相続人(遺産を受け取る側)であるご自身がマイナンバーを取得する場面もあるでしょう。遺産を受け取る側の海外居住者は、印鑑証明や相続税申告書、銀行口座開設などで自身のマイナンバーが必要になるケースを想定し、マイナンバーカードの申請手続きを前もって済ませておくのは合理的であると考える方もおられるかもしれません。

しかしながあ、<タイプ4>に入る人は、在外公館でのマイナンバーカード手続きができない状況下、相続発生時には日本に戻ってから多くの手続きがスタートするという点で、様々な労力を要する可能性があります。

国税庁『相続税・贈与税に関するFAQ』

デジタル庁『「もしも」の時に備えて金融機関(銀行等)の口座とマイナンバーを付番できます:口座管理法(預貯金口座付番制度)のご紹介』

口座管理法・口座登録法および銀行口座などの金融口座との紐づき

前述のような相続資産受け取りのために日本の銀行口座に現金が振り込まれる場合、<タイプ4>の方で銀行口座を日本に保有していない人は、銀行口座の新規開設、その相続財産を自身のアメリカの銀行へ海外送金をする際に発生する様々な手続きがあります。

冒頭の河野デジタル大臣の記者会見において、2024年4月1日に施行された口座管理法について言及されています。口座管理法では希望者が「任意で」金融機関にマイナンバーを届け出て、口座にマイナンバーを紐づけると強調されていました。「口座管理法では、届け出がないのに口座がマイナンバーと紐づけられることは無いし、金融機関からの通知に回答しないと勝手に口座が紐づくというのも誤った情報です。国民の利便性向上と制度の丁寧な周知方法をしっかりやって参りたい」とは大臣のメッセージです。

通称・口座管理法「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」は、金融機関の顧客が自らの意志でマイナンバーを金融機関に届け出、銀行口座に紐付けることができる新しい制度です。この法律の主な目的は、災害時や相続時にマイナンバーを通じて迅速に口座を確認できるようにすることです。この制度は任意であり、顧客が届出を行わない限り自動的にマイナンバーが口座に紐付けられることはありません。また、この制度は公金受取口座の登録とは別の制度であり、混同を避けるための周知と説明が重要視されています。

リンクはこちら:

預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律 (口座管理法)

デジタル庁『預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要』  

NHK 『マイナンバーと口座 ひも付けどこまで?何のため?【詳しく】』

デジタル庁『よくある質問:預貯金口座付番制度について』

アメリカのFBARやFATCAとの関係

前述のどのタイプの人であっても、米国税法上の米国居住者(米国市民、グリーンカード保持者、労働ビザ滞在者、一部の研究者や学生)は、保有資産が閾値を超えるとこれら日本の銀行口座、証券口座、保険口座等の金融口座の申告が米国側で義務付けられています。これは、日本のマイナンバーが自身の口座と紐づけられている・いないに関わらず、ご自身の住民票が日本にある・なしに関わらず、米国税法上の米国居住者である以上、条件を満たせば米国の申告義務があります。米国市民、グリーンカード保持者は、正式な税法上の出国手続きを行っていない限り、どの国に住んでいても申告義務があります。

金融機関に関する代表的な申告は次の二つです。

  • 「外国銀行・金融口座報告」Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)」

  • 「外国口座税務コンプライアンス法による特定海外金融資産届出書」FATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)によるStatement of Specified Foreign Financial Assets)

加えて、国際相続においても閾値を超える場合は、米国へ申告義務があります。

  • 「外国信託との取引および特定の外国贈与の受領を報告するための年次申告書」 Annual Return To Report Transactions With Foreign Trusts and Receipt of Certain Foreign Gifts

まとめ

2024年5月27日に施行されるマイナンバー法改正により、海外でのマイナンバーカード申請が拡充され、行政手続きの効率化と利便性の向上が期待されています。一方で、海外居住者の中ではこの効率化の恩恵を受けにくい人もいます。在米邦人は、マイナンバー関する情報をタイムリーに得て、ご自身の状況に応じてマイナンバーカードの手続きや計画をなさってください。

以上

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