東京都知事選で顕現した日本の問題点

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規 氏

東京都知事選は、当初保守的な小池百合子氏と革新的な蓮舫氏の対決との見方でした。しかしながら、結果は現職の小池百合子氏が3選し、次点が前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏、小池百合子氏への対抗馬と目された蓮舫氏が3位に沈むという意外なものでした。

今回の都知事選は過去最多の56人が出馬するという異例の選挙戦でしたが、立候補者数の多さだけでなく、掲示場に同じポスターが大量に貼られたり、政見放送で候補が服を脱ぎ始めたりするなど、選挙制度のあり方が問われるような選挙だったと言えます。肝心の政策論議は深まらず、現職の実績の検証も表面的なものに終始しました。その意味では、都知事選の選挙全体はいつものようにイメージ先行であり、結局は政治ショーに終わってしまったように思います。

その一方で、今回の都知事選で日本の問題点がいくつも顕現したように思います。

3位に沈んだ蓮舫氏ですが、今回の候補者の中で最も酷いバッシングに晒されていました。選挙後もメディアによるバッシングは続いており、過去の国政選挙や首長選で落選した候補者をこれほど叩きまくったことはないでしょう。その影響からか、SNS上での個人によるバッシングも拡大しており、権力者でもない落選した「タダの人」への集団による「いじめ」が繰り返されています。これは蓮舫氏が「二重国籍である」や「中国籍である」といった虚偽の情報が拡散していることと関係が無いとは言えないでしょう。(蓮舫氏の父親は台湾人で母親は日本人。本人はすでに日本国籍を取得)また、女性でありながら、権力者に対して鋭く切り込んでいた姿を面白くなく感じていた人たちもいるように思います。落選した「タダの人」への集団による「いじめ」か、それとも外国人差別なのか、女性差別なのか。いずれにしても日本人として恥ずべき行為以外の何物でもありません。今後政治の世界を志す女性を萎縮させるような動きは、決して許すべきではありません。女性やミックスルーツを持つ人、また「頑張ったのに報われなかった人」が過剰に責め立てられる社会が、良い社会であるはずが無いでしょう。

SNSや動画を駆使し、若い世代の支持を得て蓮舫氏を上回った石丸伸二氏は、選挙直後から連日連夜のテレビ出演などで注目され続けています。SNS選挙時代突入で生まれた小泉純一郎元首相や橋下徹元大阪市長に比肩する“トリックスター”と持ち上げるメディアも多いようです。

彼に関するメディアの報道に偏りが感じられるので、事実から判断すると、複数の裁判で敗訴しており、その中身を見ると彼の実像は、まるでモンスタークレーマーのように思えてなりません。(※1、※2)
また、彼の議論の際の手法も「石丸構文」(※3)と呼ばれ、賛否を含め様々な取り上げ方をされています。石丸構文が話題になった石丸氏と古市氏のやり取りについては、面白おかしく取り上げられている面もあり、ここではその内容の是非について触れません。

しかしながら、石丸構文と呼ばれるロジックの危険性や問題点については言及したいと思います。

現在問題となっている兵庫県知事のパワハラ疑惑・おねだり疑惑(※4)ですが、神戸新聞を皮切りに全国に報道される事態となり、7月11日には副知事が辞任を決意し記者会見を行ったものの、知事は自身の辞任を否定しています。すでに2人の関係者が亡くなっており、県民の不信も頂点に達していても「辞めるという選択肢はない」と答えています。マスコミとのやり取りにまっすぐ答えず、都合の悪い質問には上から目線で逆に質問を繰り返す過程で別の話に挿げ替え、時間切れで最終的にうやむやにするという手法は、いわゆる「石丸構文」と極めてよく似た論理的骨格を持っているように感じます。

一方で、公益通報事案に対して当事者である知事指令下の県が「調査」し、告発者を「調査手法は申し上げられない」としながら「停職3か月」の懲戒処分に断罪しており、まさに前近代的なやり方を押し通そうとしていたわけです。とても民主主義の国とは思えない構図ですが、この構図には既視感があります。第二次安倍政権の際の、モリカケ問題や桜を見る会などと同じ構図でしょう。自殺者が出ていることも類似点を感じますし、故安倍晋三氏がよく使っていた「ご飯論法」も石丸構文との類似性を感じます。故安倍氏の場合は、国会での詭弁だけでなく、嘘も連発していましたが。

当選した小池百合子氏については、学歴詐称の疑惑が晴れていないどころか、むしろ疑惑が深まっており(※5)、公職選挙法3条虚偽事項公表罪で失職の可能性も出てきています。

学歴詐称については、故安倍晋三元首相や麻生太郎自民党副総裁なども過去に詐称しており、政治家の学歴詐称や経歴詐称は放置され過ぎていると断じざるを得ません。一般論として言えば、学歴詐称や経歴詐称が発覚すれば、詐欺罪、軽犯罪法違反、私文書偽造罪、民事責任(損害賠償、懲戒解雇など)に問われるのですが、政治家に対しては、マスコミも有権者も寛容すぎるのは何故なのでしょう。

また、小池氏の2期にわたる都政の実績検証も不十分ではなかったでしょうか?初当選時に掲げた『7つのゼロ』から大幅に後退しているという指摘もありましたが、結果的に何ら検証されること無く投票日を迎えてしまったように思います。

同様に、石丸伸二氏の広島県安芸高田市長時代の実績についても検証がされていない中で、投票日を迎えてしまいました。彼が自身の市長時代の実績と言っていた中身は、実はフェイクであり、これ以上市長を続ければ自身の政策失敗が露呈してしまうため、都知事選に逃げることで安芸高田市政に関する責任を放棄したという指摘もあります。(※6)

このように都知事選を振り返ると現在の日本社会に横たわるいくつもの問題が現れていると感じます。在日外国人や女性に対する差別や集団いじめ。石丸構文やご飯論法などの詭弁使いや嘘つきたちに権力や影響力を与える風潮。政治家の学歴詐称や経歴詐称に寛容すぎる国民。政治家の実績や政策論の検証なしにテレビやSNSで見たイメージだけで投票する浅い政治意識。これらがもたらすものは、果たしてより良い日本の将来につながるのでしょうか?

子供の頃、親に「嘘つきは泥棒の始まり」と言われた人は多いと思います。自分たちの生活や将来、子供たちの未来がかかっているにもかかわらず、嘘つき(否、すでに泥棒?)に自分たちの生活やこの国の未来を託していることに何の疑問を持たないのは、愚者以外の何物でもないでしょう。

※1:石丸伸二氏「市長選ポスター代未払い」敗訴確定 最高裁が上告退ける(朝日新聞)

https://www.asahi.com/articles/ASS7831CTS78UTIL01LM.html

※2:二審も石丸氏の名誉毀損認める 広島高裁、市に賠償命令(山陰中央新報)

https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/603342

※3:都知事選躍進の石丸伸二氏、問答が「構文」化されSNSで反響  「進次郎構文」と比較も(ITmedia NEWS)

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2407/10/news191.html

※4:兵庫県知事「今、記憶がない」“特産品の要求音声”直撃に… パワハラ告発男性が残す(日テレNEWS)

https://news.ntv.co.jp/category/society/f4979af5fd13472ba63d74ef3a300dad

※5:学歴詐称の疑いで小池百合子都知事の告発状を東京地検に提出 元側近の小島敏郎氏(産経新聞)

https://www.sankei.com/article/20240618-XPO3L3KSWNIDJNRYQ7R2WTOLAE/

※6:「都知事選で2位」の石丸伸二氏が出馬した「本当の理由」…安芸高田市長時代に残していた「4つのフェイク」(現代ビジネス)

https://gendai.media/articles/-/133470?imp=0

以上

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