エイジテック・ジャパン|シニア世代の特徴|カーターグループの視点

エイジテックのために私たちが取り組むこと

高齢者をサポートする製品やサービスの開発に最新のテクノロジーが使われるようになったのは、比較的最近のことです。しかし、高齢者が社会の一員となり、加齢に伴う身体的・認知的課題を克服できる世界は、徐々にですが着実に現実のものとなってきました。

高齢者の問題が社会で優先されず、高齢化に伴う身体的、精神的、経済的ニーズへの対応が不十分なことは、私たちの社会が昔から抱えている課題です。それに加え、近年では最も経験豊かで知識も持っているはずの高齢者が、若者のようにデジタルを使いこなせず、時代に取り残されるという課題も生まれています。

特に日本のように急速に高齢化が進んでいる社会では、高齢化に伴って生まれるあらゆる課題を無視できません。このような課題に目を向けることは自然なことで、我々の取り組むべきことです。

しかし、どんなに努力しても、高齢者向け製品の開発は至難の業です。イノベーションの世界でありがちな、イノベーターが実際には存在しないかもしれない製品のユースケースや需要を予測するのとは異なり、高齢者には未充足のニーズがたくさんあること自体は容易に分かります。

 一方で、ユーザー視点で問題を定義することは容易ではありません。例えば、スマート・スピーカーのような単純なものを考えてみましょう。音声のみで、スマートフォンどころか、普通の電話と比較しても(理論上は)かなり簡単に操作できるスピーカーのため、多くの課題を解決してくれるはずです。高齢者が家族と話したい時、電話の代わりにスピーカーを使うようになってもおかしくありません。

 ところが残念なことに、私はこのスピーカーを高齢の両親に使ってもらおうとして、完全に失敗しました。使ってもらえるようにあの手この手を尽くしましたが、使い始めに何度か躓いてから、両親は利用しようとしなくなりました。今はシドニーの両親のアパートで埃をかぶって放置されています。

実際、私たちが高齢者のために必要だと考えた製品やサービスが、高齢者のニーズと一致しないことはよくあります。私たちはそのことを認識すべきです。そもそも、高齢者用に「仕様変更」が必要だという考え方は、改めた方が良いかもしれません。日本では、「老い」の定義そのものが欧米諸国とはかなり異なっています。70代の子どもが90代の親を介護することも珍しくありません。

高齢者の「役に立つ」という感覚

2022年3月、私たちはインターネットを利用している16歳から89歳までの日本人を対象に、調査を行いました。これは、カーターグループの調査の中で、最も幅広い年齢層を対象としたものです。調査結果から、70代、80代の人々が他の世代よりも「社会の役に立っている」という感覚を持っていることが分かり、私たちは大いに勇気づけられました。なんと、80代の調査対象者の4分の3が、家庭内外で果たすべき役割があると感じていたのです。恐らく、高齢になるほど世界が狭まり、一つひとつの役割に重みを感じられるようになるのでしょう。

私たちの中で最も幸せなのは高齢者?

「社会の役に立っている」と感じているという調査結果と同様に、最も幸せな感情を持っているのも70代と80代の人々でした。しかし、高齢者の多くが明るい感情を持っていたとしても、歳を重ねることによってさまざまな課題や困難が生まれることも事実です。多くの人は、自分がサポートを必要としていることが明らかであっても、それを認めようとしません。そのため、身体的・精神的な課題が増え続ける中、前向きに取り組もうとする高齢者を支えるあらゆるサポートが必要なのです。

60歳以上の人々に、ロボットやデジタルサービスなどの新しいテクノロジーの導入について質問したところ、少なくとも約半数が抵抗を持っていないことが分かりました。

それどころか、およそ10人に1人は「マニア」と呼べるほど、新しいテクノロジーを好む人々です。彼らは何事にも前向きで、積極的です。80年代に自動車電話が登場したとき、彼らはいち早く試してみたことでしょう。

エイジテックを好む高齢者たちは、達成感や使命感を楽しんでいるようです。彼らのうち、3分の2は人生で何かを成し遂げたと感じ、4分の3はまだやりたいことがあると感じています。目的意識や何かをやりたいと思う気持ちを持っていることが彼らの特徴です。

「ケイコ」の場合

私たちがつくり出したペルソナ「ケイコ」は、エイジテックのイメージキャラクターです。彼女が発する言葉は、実在する人物が実際に回答した言葉そのものです。例えば、運動が困難な人のために動きをサポートするエクソスーツを使うことについて、ケイコ考えは、実際に高齢者に調査したときの回答からきています。

幸せを感じている人ほど、エイジテックへの関心が高い傾向にあります。人は気分が良くなると、自分のためにもっと何かをしたくなります。朝起きる理由があること、つまり「生きがい」を持っていることが、新しいテクノロジーへの欲求を駆り立てるのであって、その逆はありません。私たちはエイジテック製品やサービスを開発する時、彼らのように前向きで、生活の質を高め、高齢者が採用したくなるような技術の開発と普及に力を貸してくれる人々を巻き込む必要があります。

リビング・ベスト・コミュニティ

カーターグループでは、エイジテックの開発と普及を促進する新しいビジネスモデルをつくることを大きな目標としています。私たちはこれを「リビング・ベスト」と呼び、日本でスタートしました。これは国内外のプレイヤーに門戸を開いており、国際的なコラボレーションも促進しています。

このビジョンを実現するために、2つのコミュニティを構築しています。一つはユーザーコミュニティで、エイジテックに強い関心を持つ高齢者の方々を募集しています。もう一つはプロフェッショナルコミュニティで、エイジテックに取り組んでいる、あるいはこれから始めたいと思っているスタートアップ、企業、学術機関、政府機関、プロバイダーなどが対象で、この記事の読者の方も多いでしょう。

リビング・ベスト・コミュニティへの参加と共創

私たちは、次のような世界を目指しています。

  • エイジテック・ソリューションが、緊密な協力関係のもとで考案され、共創される。

  • 開発と普及を加速させられる、またそうする意思のあるリーダータイプのユーザーが、デザインやマーケティングのプロセスに参加している。

  • プロバイダーや、エイジテック分野で商売をする人たちが、協力してユーザーの利益を追求する。

  • 次の大きなブレークスルーを目指すスタートアップが、プロバイダーやユーザーが集まる活発なコミュニティにアクセスすることができる。

カリフォルニア大学サンディエゴ校 デザイン・ラボのディレクターであるドン・ノーマン氏なら、こう言うでしょう。

機能的で、理解しやすく、使いやすい製品を作るだけでは不十分で、生活に喜びや感動、満足感、楽しさを与え、もちろんデザイン的にも優れた製品を作る必要があります。

ドン・ノーマンは現在86歳ですが、ユーザー中心設計の考え方を提唱し、ユーザビリティーの概念を広めた人物です。

リビング・ベストでは、エイジテック開発の場面で、ユーザーが抱く感情やユーザーの幸福度が増したかどうかを重要視しています。そうすることで、現代における最も重要な課題のひとつに取り組むことができます。あなたが助ける人は、いつかあなた自身かもしれないのです。

私たちは、社会の行く先を見据え、エイジテックの未来のために行動するメンバーを募集しています。私たちと一緒にエイジテックの未来を覗いてみませんか?

記事の無断転載を禁じます。

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リビング・ベストの詳細は、ウェブサイトをご覧ください。ご質問などございましたら、info@living-best.techまでお問い合わせ下さい。

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