日本の年金をアメリカに報告していない場合の対応
CDH会計事務所
国際税務コンサルタント
ハラー 基江 氏
アメリカ国外にある銀行口座や証券口座を持つアメリカ居住の日本人が、その残高や口座番号をアメリカ当局に報告しなければならないFBAR (Foreign Bank Account Report)という申告があることは徐々に周知されつつありますが、日本で受け取っている日本の年金をアメリカ当局へ報告しなければならないことはまだまだ認識されていないようにみえます。このような所得の未申告に関してはどのように対応すればよいのでしょう?
1.時効にあわせ過去にさかのぼり申告
そもそも、日本の年金をアメリカに報告しなければならないことを知るきっかけは何だったか?というと、FBARの存在を知った時、というパターンが多いようです。その逆も然り、年金所得をアメリカのタックスリターン上で報告はしたものの、その振込先である銀行口座は報告していなかったというパターンもあります。
この年金収入が未申告であった場合、過去に遡って申告書を提出することで修正ができます。
通常タックスリターンの時効は3年ですが、25%以上の過小申告がある場合は6年、そして、米国外金融資産からの所得が5,000ドルを超える場合も6年の時効となります。従って、該当する年数を遡及的に修正申告をすることができます。
2.アメリカ国外にある金融口座の報告義務
年金の振り込み先である日本の銀行口座。この残高が年間でいっときでも10,000ドルを超えた場合はFBARでの情報開示が義務付けられています。正確にいうと、アメリカ国外に保有している金融口座の合計金額が年間で$10,000ドルを超えたらFBAR申告が必要ですので、例えば、口座は5つあり、それぞれの残高はすべて5,000ドルであった場合にも合計金額は25,000ドルですので、5口座すべてを報告する必要があります。
このFBARの時効も6年ですので、過去6年のうち合計金額が10,000ドルを超えた年があれば、その年のFBARを提出する必要があります。FBARの申告漏れはマネーロンダリングの世界に関わる取り締まりであり、ネット社会、グローバル化、暗号資産に代表されるような、資金の流れがトラッキングしにくい環境が存在するため、取り締まりは年々強化されています。FBARの申告漏れに対するペナルティは非常に厳しいので、十分に注意をしてください。
3.日本で年金は課税されるのか
日米間の租税条約では、「居住地国課税」といって年金を受け取る人の住んでいる国・居住地国で課税するものとされているため、米国の居住者であれば日本では課税されません。ただし、日本で課税を受けないためには所定の手続きが必要ですので注意が必要です。この手続きは、日本の源泉徴収を免除してもらう方法で、「租税条約に関する届出書(源泉徴収関係)」と「特典条項に関する付表」を提出します。
依然としてコロナ禍にあり、上記の手続きは時間を要します。手続きがタックスリターンまでに間に合わず、日本側で源泉徴収されてしまうと、アメリカのタックスリターンでも課税対象となりますので二重課税が発生します。このようなときは、外国税額控除の仕組みを利用し二重課税を回避できる場合があります。
参考文献
https://www.irs.gov/irm/part25/irm_25-006-001r
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm
以上
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