アメリカと比べると実は楽な日本での債権回収
日本に15年間住み、東京で12年間債権回収会社を運営してきた私は、日本とアメリカでの債権回収の違いについてよく質問を受けます。両国で数年間にわたり、個人と企業に対して債権回収を行ってきた経験から言えるのは、日本での回収業務の方がはるかに簡単であるということです。
では、それがどれほど簡単であるかを説明するために、日本での典型的な債権回収の会話を以下にご紹介しましょう。
小林(架空の人物):もしもし、小林です。
スティーブン:小林さん、私はインターナショナル債権管理協会のスティーブン•ギャンと申します。(電話越しに軽くお辞儀)大変お忙しいところ申し訳ございませんが、今、お話しさせていただけますか?
小林:ああ、はい。先日、お手紙をいただきまして、大変申し訳ありませんがご連絡忘れていました。本当に申し訳ございません。
スティーブン:いえいえ、全く問題ございません。手紙でもお伝えしましたが、ABCクレジットカード会社への未払い残高が48万円ございます。恐れ入りますが、お支払いのご予定についてお聞かせいただけますか?
小林:はい。支払いを済ませたいと思っていたのですが遅延してしまい、本当に申し訳ございません。弁解の余地もありません。
スティーブン:ご理解いただき、誠にありがとうございます。では、できるだけ早く全額お支払いいただけますか?
小林:心よりそれができればと思っているのですが、現在の経済状況が厳しく、何とか生計を立てている状態でして…
スティーブン:そのような状況、ご理解いたします。では、ABCクレジットの許容範囲となりますが、お支払い可能な額を教えていただけますか?
小林:もし可能であれば、最大の誠意をもって今月末から月額6万円の8回払いで返済したいと考えております。
スティーブン:ご提案ありがとうございますが、4回払いで月額12万円のお支払いは可能でしょうか?
小林:ギャンさん、私の経済状況は本当に厳しく、無理な約束をしたくありません。この債務と他の債務の返済ができないこと、本当に恥ずかしく思っています。
スティーブン:では、6回払いで月額8万円のお支払いではどうでしょうか?この債権延滞期間は既に1年ほど経過しており、ABCクレジットもこれ以上待つのは難しいかと思います。
小林:では、分割の6回払いで月額8万円を支払うよう努力します。どうかご理解ください、ギャンさん。私はABCクレジットに、なけなしのお金をはたかなければいけない状況なんです。
スティーブン:そのようなご誠意で協力いただけること、大変感謝いたします。その旨ABCクレジットにお伝えいたします。
小林:お電話ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。また、ABCクレジットに心よりお詫び申し上げます。
スティーブン:こちらこそ、ご協力いただきありがとうございます。
小林:ありがとうございます。
スティーブン:ありがとうございます。
小林:今後いつでもお電話ください。ありがとうございました。
スティーブン:それでは、失礼いたします。(電話越しにもう一度軽くお辞儀)
小林:失礼いたします。
スティーブン:(小林さんが電話を切るのを待ってから、自分の電話を切る)
この会話は一例ですが、日本の債務者の約70パーセントが最初の会話で支払い契約に応じるものの、約90パーセントが最初の支払い約束を破るという傾向にあります。しかし、3回目の電話までには支払いが行われ、その後の支払いスケジュールはほぼ守られています。
日本とアメリカでの債権回収の最大の違いは、日本人は羞恥心を伴いながら、少なくとも電話上では支払い義務を果たそうという誠意があることです。アメリカでは、時にはあまり礼儀正しくない言葉で「うせろ!」と言われることもありますが。
以上
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スティーブン・ギャン:全米与信管理協会(National Association of Credit Management)認定の与信リスク管理コンサルタント
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