財務諸表の株主貸付勘定をどのくらいの頻度で見ていますか?

ステラ・リスク・マネジメント・サービス(株)
代表取締役、公認会計士、認定与信管理相談士
スティーブン・ギャン

与信管理の専門家は、将来の商業顧客の貸借対照表を確認する際に、最も馴染みある流動資産や流動負債のみに目を向ける傾向があります。もし流動比率や当座比率が許容範囲内であれば、すぐに次の信用審査案件に進むことが一般的です。

しかしご存知のように、企業の財務状況やその他の問題など多くがわかる詳細に細心の注意を払うことが非常に重要です。ここで「株主貸付金勘定」と呼ばれるものについて基本的な説明をいたしましょう。

一般的に株主貸付金とは、会社の所有者や株主が会社から受け取った資金を指します。所有者が受け取った資金が配当、給与、または贈与として指定されていない場合、その取引は会社の帳簿上、貸付金として記録されます。

さて、この勘定について理解すべき2つの重要なポイントは、記録された期間金額です。通常、会社から所有者への貸付金は短期資産として記録され、1年以内に返済されます。金額が小さく、1年以内に返済されなかった場合でも、税務や会計上の問題を引き起こす可能性は低いでしょう。しかし、これらの勘定は毎年の会計年度の終わりまでに精算することが望ましいです。

さらに、貸付金額には妥当な利率を含む貸付契約を付随するべきです。言い換えれば、たとえ会社が小規模な非公開企業であっても、正確かつ合法的に処理することで、IRS(米国内国歳入庁)の監査やその他の法的問題を回避できます。

問題が発生するケース:

  1. 貸付金額が現金、売掛金、在庫、買掛金などの他の勘定と比較して多額である場合

  2. 貸付金が1年以内に部分的あるいは全額返済されない場合

このような状況から生じる可能性のある疑問

  • これは所有者の財務上の問題を示しているのか?

  • 会社を不安定にするようなことが所有者に関連して起こっているのか?

  • 所有者が税金を回避しようとしているのか?

ケーススタディ:顧客からの信用依頼(後払いを要求)

先日、私のクライアントが大口の信用依頼(後払いを要求)を受けました。その額は、信用評価のために既存顧客の財務諸表を必要とするものでした。

クライアントが財務諸表を確認すると、株主貸付金勘定に約30万ドルの残高が記載されており、売上が500万ドル、純利益がほぼゼロとなっていました。現金勘定は約10万ドルで、他の財務比率からも会社がストレス下にあることを示していました。また2年間の株主貸付金勘定を確認すると、以下のことが分かりました:

  1. 株主貸付金勘定は、2年間の財務諸表に記録されていたにもかかわらず、短期資産として分類されていました。初年度に返済され、2年目に再び借り入れられた可能性もありますが、その時点での詳細は不明となっています。

  2. 1年目から2年目にかけて、株主貸付金勘定の期末残高が50パーセント増加の45万ドルで、利益はマイナスとなっていました。

利益が所有者に「貸し付けられている」ように見えたことからクライアントは、問題を明確にする必要があると考えました。

結論

機密保持を尊重した上で私のクライアントは、株主貸付金勘定の状況について、特に勘定が今年度中に返済される可能性も含め、この潜在的な顧客に尋ねました。明確な回答が得られなかったため、この株主貸付金勘定が会計や税務規制に従って適切に管理されていない、あるいは何か他の問題がある可能性があるとクライアントは判断しました。結果、この信用依頼(後払いを要求)は承認されませんでした。

日々の業務で多くの緊急事項に追われている私たちは、詳細に目を向ける余裕がなく、不合理な事象を見落としがちです。これが、後にキャッシュフローや回収の問題につながることになります。

以上

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スティーブン・ギャン:全米与信管理協会(National Association of Credit Management)認定の与信リスク管理コンサルタント

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電話番号:1-773-318-5187

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