海外居住者が知っておくと役立つ日本の年金制度 ~ 受給資格、調査方法、種類など

皆様の多くは老後の生活に向けて年金制度※1に加入し、毎月年金保険料を納めていることと思います。年金は社会保障政策の一環として各国で実施されており、米国居住者であれば米国年金(Social Security。以下(SS))に加入されていることでしょう。現在加入中のSSについては米国社会保障局(Social Security Administration)から定期的に最新情報が送られますし、また日系企業の駐在員の方は日本の本社経由で厚生年金に加入しているわけですから日本から年金に関する情報が送られてくると思います。

一方以前渡米前に日本で年金に加入していた場合(会社員の方は会社経由で厚生年金※2、その他の方は個人で国民年金に加入していた可能性があります)、渡米後日本の年金に関する情報を入手する機会はほとんどなくなります。そうした人の中には「だいぶ昔の事だし、加入期間も短いので自分は年金はもらえない」「日本の年金のことは難しそうなのでわからない」とあきらめていたり、そもそも「年金に加入していたかどうか覚えていない」と言う人もいるのではないでしょうか?

実は米国移住前、たとえ短期間でも日本で年金に加入しれば老後に米国年金と両方受給できるのです。しかしそうした有益な情報は海外居住者へ配信される機会が少なく、多くの方が知らないままでいます。それでも最近はインターネットを通じて情報を見つけることが容易になりましたが、専門用語が多くわかりづらかったりネットの情報では一部正しくないものや古い情報が氾濫して判断が難しい、といった理由で困惑している人も少なくありません。そこで今回は海外居住者が知っておくと役立つ日本の年金制度について紹介致します。

1.年金に国籍や居住地は関係ありません

年金は将来の老後の生活のため、若くて働ける現役時代のうちに少しずつ自分のお金を積み立てていく法律に基づいた国の「保険制度」です。保険ですから若いうちに保険料を毎月支払いますが、保険料を払い込んだにもかかわらずその後外国籍を取得したり国外に転居したからといって保険金(年金)を支給しないなんておかしいですよね?ですから米国籍を取得した人や長年米国に居住している(又はしていた)人でも、米国年金(SS Benefit)の他に日本の年金を受給できます。同様に日本国籍で日本に帰国した人もSS Benefitを受給できます。

つまり昔渡米する前に日本で会社勤めしていた人(自動的に厚生年金に加入している可能性が高いです)や国民年金に加入していた人は、たとえ短期間でも年金を受給できる可能性があるのです。 

2.海外居住者に適用される例外措置

 ではここからが本日の本題ですが、次に年金を受給できるかどうか(受給資格)の話です。年金制度には受給するための要件があります。もっとも重要な要件は年金加入期間(保険料を払い込んだ期間)が最低10年(120か月)必要であることです※3。米国在住者の中には20~30歳代に渡米されて日本で年金保険料を10年以上払っていない人も多くいます。ちなみにこの10年というのは2017年に25年から短縮されたので、中にはまだ「25年間必要」と誤解している人もいるようです。

この10年の要件をクリアしていなければ「自分は年金を貰う権利がない」と思われているかもしれませんが、実は例外措置があって海外居住期間もこの要件である10年間に含めることができるのです。具体的には次の2つの期間のいずれかを日本の年金加入期間として通算(合計)することができます。

①SS加入期間(国籍不問)

②日本国籍のまま米国居住期間(外国籍取得後は対象外)

多くの人が①または②に該当すると思いますので、要件を満たしていないと思われていた人でも実は受給できることになります。

3.年金記録の調査方法

 調べ方ですが手っ取り早いのは日本年金機構に直接電話して聞くことです。さすがに電話では特定の個人の受給権まで教えてくれませんが、調査方法や必要書類、最近スタートした「ねんきんネット」の使い方などを教えてくれます。定期的に日本へ行かれる方は直接自分で年金事務所を訪問するのが確実です。また私共の事務所にご依頼いただければ無料で年金記録の調査を行います。 

4.年金の受給開始年齢

原則65歳からとなります。昭和36年以前に生まれた人の場合、一部厚生年金だけを64歳前から受給できることもあります。またSS同様繰上げ・繰下げ制度があり、65歳の前または後からの受給開始も可能です。(60歳~75歳の範囲で。その場合年金額が減額又は増額されます)

5.老齢年金以外の年金

老後に受給する老齢年金以外にも、SS同様遺族年金、障害年金、加給(家族)年金などがあります。ただしこれらの年金を受給するためにはかなり細かい要件があり、誰でも受給できるわけではありません。

いかがでしょうか?今まで「自分は年金を貰えない」と思っていた人でも昔日本で会社勤めをしていた、短期間だけ国民年金を払っていたなどの記憶があれば受給権があるかもしれません。ダメ元で一度調べてみてはいかがでしょうか?

尚当社では「年金記録の無料調査」や「日本の各種専門・行政手続、セミナーに関するメルマガ配信」サービスを実施しています。ご希望の方は件名(「年金記録調査希望」「メルマガ希望」など)とともにメール(info@life-mates.jp)でお知らせ下さい。

※1:国が運営する公的年金制度のこと。その他職域団体が運営する年金制度があります

※2:厚生年金には日本年金機構が運営する厚生年金の他、公務員・学校関係者等が加入する各共済年金があります

※3:SSは40クレジット(約10年)以上の加入が要件となります

記事の無断転載を禁じます。

———————————————

当社(ライフメイツ)では海外在住者や日本への帰国者向けに日本の行政、法律、金融、暮らし、に関する情報、アドバイス、手続代行サービスを提供しています。お悩み、ご相談があれば当社へご連絡ください。(81-3-6411-8984、Skype/Line可、info@life-mates.jp、www.life-mates.jp まで

Previous
Previous

キャピタルゲイン税

Next
Next

二重国籍者がアメリカ留学をする際の注意点