6月はLGBTQの月
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
アメリカでは6月は「LGBTQの月」です。L-レズビアン、G-ゲイ、B-バイセクシャル、T-トランスジェンダー、Q-クィア、を意味します。
LGBTはご存じだとは思いますが、Q-クィアとは、「性的マイノリティや、既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称」「自分の性を定めきっていない」人のことです。(参考文献:「クィア(Queer)とは・意味」、Ideas for Goods)
なぜ6月がLGBTQの月になったのかというと、1969年6月29日にニューヨークのグリニッチ・ビレッジにあるゲイ・クラブで起こった出来事を発端としています。警察がここに集まった人々を差別し、いやがらせをしたことがもとで、6日間の暴動がおこりました。これが米国での同性愛の権利を求める運動につながっていきました。翌年6月には、同じ場所で、米国で最初のゲイ・パレードが行われました。
その後、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴなどでもゲイ・パレードや同性愛者の権利拡大運動は起こり、10月が同性愛者の月とされた時期もありましたが、1994年に当時のクリントン大統領によって、6月が同性愛者の月、と定められました。LGBTの月、ひいてはLGBTQと変更されるまでには、当時のオバマ大統領、そして2021年にバイデン大統領が変更するまで、それなりの年月がかかりました。
(参考文献:”The History of Pride Month”, By 316th Wing Historian, June 23, 2021, Joint Base Andrews, America’s Airfield”)
(参考文献:”Greenwich Village, America’s first Gayborhood” Oscar Wild Tours, May 27, 2021)
以前は、米国の軍隊は同性愛者を排除する方針を取っていましたが、2012年に初めて6月の同性愛者の月を祝い、軍隊入隊選考に同性愛者かどうかを聞くことはやめました。
ただ、「聞かない」だけでは解決できない問題もでてきます。
たとえば、従業員が更衣室を使う場合は、どうでしょうか。雇用主として、どちらの性別かわからない従業員に勝手に男性または女性更衣室を本人の意思だけで使用させて良いのでしょうか?トランスジェンダーの女性が女性更衣室を使いたい、と言ったとき、もともと女性として生まれた女性従業員が「いやだ」といったらどうしますか?
以前、このコラムにもかきましたが、私の住んでいるイリノイ州シカゴ郊外の高校で、トランスジェンダーの女子生徒が、女子更衣室を使わせろ、と要求したことがありました。学校は、苦肉の策として、教員用の更衣室の一つを、その生徒の個人更衣室として使わせる、と提案しましたが、本人が拒否して、あくまでも女子更衣室を別の女子生徒と一緒に使用することを要求しました。女性として生まれた女性生徒や父母からの反対もありましたが、4年間の論争・問答の末、トランスジェンダーの女子生徒は、女子更衣室を使用できることになりました。(参考文献:”After four years of controversy embattled Palatine based school district grants transgender students unrestricted locker room access”, November 15, 2019, Chicago Tribune)
話は変わりますが、私が住んでいるシカゴ郊外では、プールのロッカールーム・更衣室は「男性用」、「女性用」、「家族用(ユニセックス)」と3種類あります。息子たちが小さいときに、女性用の更衣室を使わせようと思ったら、「3歳以上の男子の使用を禁止します」と書いてあったため、やむを得ず「家族用」ロッカールームを使用しました。家族用の場合、ママと息子、パパと娘などが利用できます。ユニセックス更衣室では、ロッカールームは男女共用ですが、個別に仕切った着替えのスペースがありました。息子とそのスペース内でドアやカーテンを閉めて着替えをしたものです。
雇用主からすると、トランスジェンダーの方、クィアなど、まだはっきりと性別を決めていらっしゃらない方の更衣室をどうするか、という問題はいつもついてくると思います。心が女性であっても、体が男性である方が女性用更衣室に入ってきたとすると、女性社員から反発がでるのは目に見えています。男女別の更衣室を作る方が雇用主としては費用が節約できるとは思いますが、これからの時代、更衣室は初めからユニセックスにしていく方が現実的かな、と思います。
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