戸籍について
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
日本には戸籍があり、戸籍を見ると、「家族」すべての生年月日、結婚した日などがわかります。ご存じの通り、戸籍は「家族」ごとに各自が決めた本籍地に保存されています。
米国には戸籍がありません。というか、日本の戸籍の方がかなり特殊な制度と聞きました。
米国では、子供が生まれたら、子供が生まれた場所の役所に出生届けを提出します。病院で生まれれば、病院が提出してくれます。ただし、両親の名前、生年月日などは自分で記入します。私の子供たちが生まれた時には、当然私のインフォメーションは保険の情報を出した時、病院に提出しましたが、子供の父親のインフォメーションは私が手書きしました。子供の父親の「身分証明書」を提出してはいません。米国は市民権を与えるのに出生地主義を取っているため、子供が米国で生まれた、という事実の方が、親の身分証明よりも大事なのです。
米国生まれの子供たちが米国のパスポートを取得するためには、米国の出生届を提出する必要があります。米国には「本籍地」がないため、子供の出生届は子供が生まれた病院のある市町村にある役所で管理されており、出生届の写しを取るのは、当然その役所から取り寄せます。
住民票もありません。日本でいう住民税もありませんが、各州に州の所得税はあり(州税がない州もあります)、例えば私の住んでいるイリノイ州では収入の5%を州の所得税として納めています。
米国で結婚した時には、日本人同士であっても、役所に行き、まずメリッジ・ライセンス(結婚許可証)を取得しました。メリッジ・ライセンスを持って、メリッジ・コート(家庭裁判所のようなもの)で裁判官に結婚を正式に認めてもらうか、または、寺院・仏閣・教会など、お坊さんの前で正式な結婚届けを出してもらう必要がありました。結婚証明書は、結婚式(裁判所も含む)を行った市町村の役所が管理しています。
離婚届けも、やはり、離婚届けを提出した場所の役所が管理します。結婚届を提出した役所に届け出る必要はありません。(参考文献:”Illinois Legal Aid Online”)
前にも書きましたが、ラストネーム(姓)は、家族名ではないので、本人が変更したくなければ、変更届を提出しなければ良いだけです。婚姻届けは単にいわゆる旧姓の男女(または同性2名)の名前が書かれているだけで、結婚後の名前は一切書かれていません。
出生届を見れば、親のインフォメーションは載っていますが、戸籍(家族の籍)がないため、兄弟を一目で証明する書類はありません。
死亡届けを出したからと言って、出生届と紐づけられるわけではありません。出生届を見ただけでは、その人が今生きているか、亡くなっているかもわかりません。(死産だった方は別ですが。)例えば、イリノイ州のマックリーン群では、現在は1860年から後に生まれた方の出生届はすべて保存してあるそうです。(参考文献:”Birth Record of Deceased Person”, McLean County, IL)
私は法律家ではないので、詳細は知りませんが、日本の戸籍は、家族ごとに作り、また一度しか結婚をしないことを前提で作っているので、2度結婚して、2度離婚すると、法律の専門家ですら理解するのに時間がかかるほど面倒なことになる、と聞いたことがあります。
世の中全般に離婚が増えてきましたし、家長制度ももう100年も前から存在しないので、日本の戸籍制度はもう必要がないのではないか、と思ってしまいます。夫婦別姓を推進している私としては、夫婦別姓が法律上可能になるためにも、早く戸籍制度を個人籍になおして欲しい、と思ってしまいます。
なお、ご存じではあると思いますが、出生届も、結婚届けも、その他のことも、米国の役所に届けを出しただけでは、日本の戸籍上の出生にも結婚にもなりません。米国で結婚、出産をされる方は、くれぐれも、日本の領事館や役所に届け出て、戸籍を変更してもらうことをお忘れなく。
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