職場でのパーティー
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
もう一年も前の話になりますが、ケンタッキー州にある会社が、従業員が嫌だ、というのに職場でサプライズで誕生会をやって訴えられた、という話がありました。このケースは、この従業員が「自分はパニック障害があるから職場で恒例になっているサプライズ誕生会をやらないで欲しい」と言ったにもかかわらず、雇用主はサプライズの誕生会を開きました。この従業員はパニック障害を起こし、その後、雇用主に職場に馴染めない、という理由で解雇されてしまいました。
(参考文献:”Man told employer not to celebrate his birthday. He was awarded $450,000 after unwanted party,” US News, April 16, 2022 )
このケースは、サプライズ・パーティーだけが問題てあった訳ではなく、その従業員が健康上の問題があったにもかかわらず、問題に会社が対峙しなかった、というところにもあります。
私が米国での学生の頃、クラスメートが「サプライズ」誕生会を企画してくれて、家に友達が何人か押しかけてきたことがありました。あの時は、戸惑いながらも楽しかったですが、もし今、同じことが起こったら、有難迷惑です。「サプライズ誕生会」といえば聞こえが良いかもしれませんが、「アポなし訪問」なのですから。他人様がいらっしゃるのでしたら、家も掃除したかった、と思うかもしれませんし、すでに別の予定を入れているかもしれません。人によっては、その日が宗教上の理由で制約のある日の可能性もあります。つまり、サプライズは企画する人の「自己満足」「好意の押し付け」になるかもしれません。
職場で誕生会に限らず、パーティーやランチ会などを開くときはなぜそのイベントがなぜ必要なのか、会社としては従業員にどう感じて欲しいのか、を先ず考えましょう。
職場で人間関係をスムーズにしたいだけであるなら「サプライズ(アポなし)」でパーティーを開く必要はありません。従業員にあらかじめ知らせて、日時を決めて、パーティーを開けば良いのです。その日は、他の予定を入れない、お弁当を持って来ない、スイーツも買わない、など、従業員は予定を立てられます。
予め予定を知らせていても、会社が主催の、会社外のディナーパーティーも注意が必要です。
まず、参加は任意にした方が無難です。「全員参加」とすると、パーティーであっても拘束時間となり、給料を支払う必要が出てくる場合もあります。給料を支払わないまでも、パーティー会場で怪我をした人がいた場合、労災で保障する必要が発生する可能性もあります。
パーティーで会社がアルコールを出した場合、従業員がアルコール中毒になる、アルコールを飲みすぎて、その後の健康を害する、パーティーの帰りに飲酒運転で捕まる、などとなると、会社の責任を問われかねません。
ドレスコードも決めておくべきです。いくらパーティーと言っても、従業員の着ている服が「敵対的」とか「性的」と思われたら、セクハラで会社の責任を問われる可能性もあります。
現在、何事にも雇用主の責任が問われる場合が多くなっています。パーティーの目的が労使関係を良くする、会社の日ごろの感謝を表す、ということであれば、トラブルを避けるため、パーティーはやらずに、従業員にその分、ギフトを送る、という方法もあります。
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