州外からのオンライン勤務

コロナ禍もあって、ここ数年はオンライン勤務やハイブリッド勤務が急速に進んでいますね。弊社のお客様の為に募集広告を出し、「オンライン勤務」と書くと、例え「雇用主と同じ州に住んでいる必要がある」と書いても、他州や果ては海外から履歴書が届きます。

応募される方は、オンライン勤務であればどこに住んでいても仕事をすることができる、と思っているのでしょうけれど、雇用主からすると、外国はもちろん、他州に住んでいる方を雇うのは簡単ではありません。

弊社の従業員が「他州に引っ越す、でも仕事をオンラインで続けたい」と言ってきました。もともとその人はオンラインで働いているので、仕事自体は動くとは思います。ただ、雇用主としてやることがたくさんあるのです。

まず、アメリカは合衆国なので、州によって法律が違います。雇用主はお給料から連邦税、州税、ソーシャルセキュリティー、メディケア・メディケイドを引き去り、会社負担分も加え、それぞれの機関に納める必要があります。

つまり別の州に住所を移す従業員のために、新しい居住地の州税をお給料から引き去り、その州に納める必要がでてくるのです。

失業保険は各州に失業保険事務所があり、雇用主は州の失業保険事務所に従業員の雇用を報告し、必要なコストを納める必要があります。

職場疾病(ワーカーズ・コンペンセーション)も、保険会社に別の州で働いている従業員がいること、その従業員の仕事内容などを報告する必要がでてきます。掛け金が変更になる可能性もあります。

雇用主の健康保険や歯科保険に加入している場合には、雇用主の保険会社が州外の保険をカバーするか確認する必要もあります。例えば、会社の保険がHMOである場合、州によってはHMOの制度がない場合もあります。保険は、いわゆる「持ちつ持たれつ」の制度ですので、加入人数が多いほど掛け金はお得、ということもあります。保険会社が、別の州の従業員を、雇用主がある州の従業員と同様の州の人数に入れて考えてくれるか、或いは別の州の人数のみ別に計算して、高い保険料を請求してくるか、見極める必要もあります。

別の州に居住している場合、労働法は居住地のものに従う必要がでてきます。州によっては、シックリーブは買い取りが必要、とか、残業手当は一日8時間を超えた時間に対して支払う、とか現在会社が与えている福利厚生と異なってくる場合があります。ひいては、その従業員のために、従業員ハンドブックを書き変える必要がでてくる可能性もあります。

州によっては、州の居住者を雇うだけで、雇用主はその州のビジネスライセンスを取得する必要がでてくる場合すらあります。

他の州で有能な人材がいて、最初からオンライン勤務で雇えば、引っ越し費用の負担をする必要もありません。ただ、本当に他州からオンライン勤務の従業員を雇う場合には、事前に弁護士さん、会計士さん、ペイロールの会社にご相談することをお勧めします。

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弊社は人材紹介・派遣だけではなく、人事コンサルタントも行っています。ご質問などございましたら、武本粧紀子 (stakemoto@paschgo.com 847-995-1705) までお問い合わせ下さい。

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