ギャップイヤーって何?
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
アメリカの特に若い学生さんが「ギャップイヤーを取る」と言うのを耳にしたことがある方も多いと思います。
日本でも、高校卒業後、大学にすぐに入らず、予備校通いをする浪人生活もありますが、アメリカのギャップイヤーは少々異なります。ギャップイヤーとは主に高校・大学を卒業したばかりの若い人が、ただちに進学や就職をせず、1年から2年、自由な時間を持つことを言います。旅行、ボランティア、インターンシップ、資格取得、語学の勉強、など様々な目的があります。
そもそも、アメリカには「3月に高校・大学を卒業して、4月1日から新卒で働き始める」という習慣はありません。高校・大学の在学中に卒業後の仕事を探し始める人ももちろんいますが、大学を卒業して、しばらく休んで、明日からでも働ける状況になってから仕事を探し始める、という方も一定数います。
高校を卒業したからと言って、すぐに4年制大学に進学する、または就職する、という人ばかりでないのと同じです。高校を卒業してから、兵役について、軍隊の奨学金を得てから大学に進学する人もいますし、まず近くのコミュニティーカレッジで短大卒業資格を得てから4年制の大学の3年生に編入する人もいます。高校を卒業してただちにギャップイヤーを取り、その後大学に進学する人もいます。
アメリカの大学入試は一発勝負ではなく、基本的には書類審査です。SATなどの統一テストもありますが、このテストは数か月に一度行われていますし、何度も受けて、一番点数の高い結果を提出すれば良いのです。大学入学のための書類選考も、成績だけで決まる訳ではなく、スポーツ、ボランティア、音楽活動など多面的な評価で選考が行われます。当然のことながら、ギャップイヤーを取って何をしたか、ということも大学の選考の対象になります。
ただ、高校を卒業して直ちにギャップイヤーを取る学生さんは3%しかいないそうですが、それでも、ギャップイヤーを経験した学生さんの大学の成績は経験してない学生さんより高い、という調査もあります。(参考文献:”Gap Years: What does the research say?”)
なお、コロナ禍もあってか、大学に在学中または卒業後にギャップイヤーを取ることを真剣に考えている学生さんは40%に上る、という調査もあります。(参考文献:”Unpredicted numbers of students are taking a gap year. What should they do with the times.”)
ただ、他の事でも言えますが、米国は基本的には人生の判断は自分で下すところです。他人に有益であるギャップイヤーが自分に取って有益かどうか、というのは自分で判断する必要があります。もちろん、ギャップイヤーを取るための資金をどのように集めるか(貯めるか)ということも、個人の判断によります。アメリカでは、ここでも、大多数がすることと同じことをするのではなく、自主性が求められるのです。
ギャップイヤーで学校では得られなかった貴重な経験ができるはずです。ただ、ギャップイヤーを終えて、普通の労働市場に入りたいのであれば、当然のことながら最初は「エントリーレベル」となり、それに見合うお給料しかもらえません。ギャップイヤーで得た経験が、必ずしもも最初に得た仕事と直結するとは限りませんし、労働市場に入った時には、ギャップイヤーを取らずに仕事を始めた友達よりお給料は低いかもしれません。
たとえギャップイヤーの間に3つの言葉を取得しても、就いた仕事が別に語学の能力を必要としていない可能性もあります。英語を数年教えていても、教職に就くのでなければ、教えた経験はキャリアにつながらない可能性もあります。人生の一時期貴重な経験をした、と考え、その後の仕事のパフォーマンスを上げ、給料のギャップを取り返すしかありません。人生に無駄な経験など一つもない、と考え、今後の人生を歩んで行きましょう。
記事の無断転載を禁じます。
———————————————
弊社は人材紹介・派遣だけではなく、人事コンサルタントも行っています。ご質問などございましたら、武本粧紀子 (stakemoto@paschgo.com 847-995-1705) までお問い合わせ下さい。