プロテクティット・グループ
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
アメリカはあらゆる場面で差別を廃止するべく、法律を整備してきました。人種、肌の色、性別、年齢、などです。
日本に本社を置く会社の支店であっても当然のことながら、米国の法律に従って、差別を排除する必要があります。
差別を排除するための「プロテクティット・グループ」(保護された人たち)という言葉を聞いたことがあるかと思います。米国では、プロテクティット・グループに当たる方々に特に気を使って差別をしないよう扱う必要があります。
では、どのような方がプロテクティット・グループに当たるのでしょうか?厳密にいうと、州ごとに多少定義は違いますが(州の定めたプロテクティット・グループもあります)、連邦法では以下の方々がプロテクティット・グループに当たります。
人種
肌の色
宗教または信条
出身国またはルーツ
性別に関すること(男性・女性の別、妊婦、性的嗜好、気持ちの上での性別)
年齢
肉体的または精神的障害
軍役
遺伝的情報
米国市民権を持っているかどうか
(参考文献:”Protected Class”, Practical Law, Thomson Reuters:)
遺伝的情報の差別は、主に保険会社が、親の病歴によって健康保険の加入を拒否するとか、保険料を高くするとかに関する差別を防ぐためにあります。
米国の市民権を持っているかどうか、というのは、もちろん不法移民は排除され、米国で合法的に働ける人を市民権を持っているかどうかで差別してはいけない、ということです。ただし、国の仕事などは堂々と応募資格があるのは「米国市民権保持者」ということはできます。
では、誰がプロテクティット・グループに当たるのでしょうか? もうお気づきだとは思いますが、ほとんど誰でもプロテクティット・グループに当たるのです。女性は人種にかかわらず、性別のプロテクティット・グループに入ります。アジア系の人は、「人種」「出身地・ルーツ」に入ります。白人の男性であっても、40歳以上であれば「年齢差別」のプロテクティット・グループに当たりますし、例え20歳代であっても「宗教・信条」のプロテクティット・グループに入る可能性があります。「出身地・ルーツ」に入る場合もあります。
要は、ほとんどすべての人がなんらかのプロテクティット・グループに該当するのです。特定のグループの人だけ気にかければ良いというものではありません。
ただ、プロテクティット・グループに該当するとはいえ、堂々と差別して良い場合もあります。仕事で必要であれば、「市民権」のある人のみ応募できる、という場合もありますし、宗教団体などで必要であれば、宗教を指定することもできます。
要は、プロテクティット・グループ云々ではなく、仕事に必要か、必要でないか、なのです。
余談になりますが、会社の規模によっては、例えプロテクティット・グループに入る人がいても、差別にならずに福利厚生を与えなかったり、解雇することもできます。家族介護休暇法(FMLA)も「50人以上」従業員のいる企業に適用される法律ですし、年齢差別法も「20人以上」従業員のいる企業に適用される法律です。逆を言えば、従業員の人数がこれ以下の企業では従う必要はありません。アメリカの法律はこういう点はフレキシブルなのです。
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