留学生が米国で仕事をみつけたその後は?

私がアメリカの大学を卒業した1993年には、F-1ビザという留学生ビザで留学した学生が卒業するとOPT(プラティカル・トレーニング)というアメリカで1年間就業できるビザを申請することができました。もちろん、現在も留学生は卒業した後にOPTで働くことができます。)

アメリカで1年より長く働きたい留学生は、OPTで就業できる1年の間にH-1Bビザなど別のビザを申請しました。H-1Bビザは、3年間の就業ビザですが、一回延長できるので、合計6年米国で就業できます。この6年の間に、雇用主に永住権を申請してもらったものでした。

その頃は現在ほどはH-1Bビザの申請者が今ほど多くなかったので、現在のようにまず申請者の中で抽選を行い、当選した人のみ書類審査を受けられる、というようなことはありませんでした。最も、当然のことながら、書類の審査はありましたし、審査で不合格となり、就労ビザを取得できなった人もいました。

現在は、いくら優れたバックグラウンドのある申請者であっても、抽選に当選しない限り、H-1Bビザの書類審査を受けることはできません。この点は、30年以上以前よりも厳しくなったと思います。

ただ、私が卒業した頃には、STEM OPTというものはありませんでした。

STEMとは、最近日本でも良く知られるようになった通り、Science, Technology, Engineering, Mathematicsの頭文字をとったものです。米国ではこの分野の人材が不足しているため、2008年に、この分野を専攻した学生は、OPTの最初の12か月を終了すると、17か月延長できるようになりました。OPTの抽選に外れ、米国で仕事ができなくなる・米国に住めなくなることを避けられ、翌年またOPTを申請することが可能になりました。2016年にはさらに延長期間が追加され、24か月となりました。

(参考文献:“Students and DSOs: The 24-month STEM OPT Extension is Now in Effect” Homeland Security

ただ、弊社に仕事を探したい、と相談にいらっしゃる学生さんの中には結構STEM OPTに関して、間違った理解をされている方がいらっしゃいます。

「自分の通っている大学・学部がSTEMに認定されている」「自分のマイナースタディーがITなので、STEMを使って引き続き就業したい」「工学部なのでSTEM OPTで働ける」

そもそも、STEM OPTを使用する為には、自分が学位を取った大学も専攻もSTEMに認定されている必要があります。マイナースタディーは学位ではないので、いくらマイナーの勉強がSTEMの分野であっても、STEM OPTとして、期間の延長をすることはできません。

そもそも、OPTを使用して働くためには、自分が学位を取った分野の仕事に就く必要があるので、この仕事がマイナースタディーと関連してない限りは、ビザを取得する条件にもなりません。

先ず、ご自分、従業員、仕事の候補者の学位を取った専攻が、STEM OPTを取得するために認定されているSTEMのリストに載っているか調べる必要があります。

(参考文献:DHS STEM Designated Degree Program List Last Updated: July 22, 2024)

Financial Mathematics、Financial Analytics.、はSTEMとして認定されていますが、Financeも AccountingもSTEMとして認定されていません。

最初の関門である自分の専攻がこのリストに載っていたとしても、次の関門は、

「雇用主がE-Verifiedに認定されており、現在もE-Verifiedを継続している」

という条件です。

E-Verifiedとは、従業員が不法移民ではなく、正式に米国で働ける証明を持っている、ということを申請するI-9をオンラインで申請できる仕組みです。

ただ、E-Verifiedに申請している米国の企業は、2018年時点で13.5%しかなく、それも場所は、カリフォルニア、テキサス、フロリダに偏っています。

(参考文献:”The Facts About E‑Verify: Use Rates, Errors, and Effects on Illegal Employment” CATO Institute“)

(参考文献:“E-Verify employer search” E-verify

STEM OPTを申請できる条件は厳しいですし、そもそもその資格のある雇用主は20パーセントにもなりません。

どうしても米国で働きたい方は、最初からSTEMに入っている学位を取得する、STEMと関係ない専攻を希望するのであれば、司法試験に受かるとか、公認会計士の資格を取るとか、やはり自分に本当の意味での実力をつけていくしかないと思います。STEM OPTに頼るのではなく、雇用主が別のプロフェッショナルなビザのサポートをしてでも働いて欲しい、と思うだけの実力をつけましょう。

以上

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