夫婦合算申告と夫婦個別申告、どちらが節税になる?

CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登 氏

米国税法は、連邦税と州税及び都市税等の地方税との 2 種類に分かれます。連邦個人所得税は内国歳入庁(IRS)が税法や基準を定めます。州税及び地方税は、各州及び市などの税務当局が独自の税制度を定めているため、州によって税制も税率も大きく異なります。 

連邦個人所得税法は、課税所得の金額に応じて、最低 10% から最高37% までの累進課税税率が適用されます。所得税額は、通常の所得税額と代替ミニマム課税制度によって計算されます。

代替ミニマム税とは、通常の所得税の計算を行うのとは、別の方法で税額を計算する制度で、通常の計算方法の税額と、この代替ミニマム税の税額とを比較して、高額なほうを選びます。 この代替ミニマム課税は、標準控除や項目別控除のうち州税・市税、固定資産税、動産税、外国税控除などが認められません。

この代替ミニマム課税所得に確定申告身分と課税所得に応じた、26% と 28% の税率が適用されます。この税額が、通常計算による所得税額を超える場合、超過額が代替ミニマム税となり、それを加算したものが所得税額となります

皆様からのご質問に多いのが夫婦別申告と合算申告ではどちらが節税になりますかというものです。連邦税を例に検証してみましょう。MFJ はMarried Filing Jointlyで夫婦合算申告、MFSはMarried Filing Separatelyで夫婦別申告の場合です。

<所得税の計算例:1>

Aさんの一般控除 (Standard Deduction) 後の課税対象所得が15万ドル、Aさんの奥さんであるBさんの課税対象所得が5万ドル;

  • MFJの場合

((150,000 + 50,000) – 190,750) x 24.0% +32,580 = 34,800

  • MFSの場合

A: (150,000 – 95,375) x 24% + 16,290 = 29,400

B: (50,000 – 44,725) x 22% + 5,147 = 6,308

Total: 35,708

MFJ < MFS TOTAL

<所得税の計算例:2>

Aさんの一般控除 (Standard Deduction) 後の課税対象所得が10万ドル、Aさんの奥さんであるBさんの課税対象所得も10万ドル;

  • MFJの場合

((100,000 + 100,000) – 190,750) x 24.0% +32,580 = 34,800

  • MFSの場合

A; (100,000 – 95,375) x 24% + 16,290 = 17,400

B; (100,000 – 95,375) x 24% + 16,290 = 17,400

Total: 34,800

MFJ = MFS TOTAL 

<所得税の計算例:3>

Aさんの一般控除 (Standard Deduction) 後の課税対象所得が18万ドル、Aさんの奥さんであるBさんの課税対象所得は20万ドル;

  • MFJの場合

((180,000 + 200,000) – 364,200) x 32.0% +74,208 = 79,264

  • MFSの場合

A: (180,000 – 95,375) x 24% + 16,290 = 36,600

B; (200,000 – 182,100) x 32% + 37,104 = 42,832

Total: 79,432

MFJ < MFS TOTAL

上記の例からご夫婦の収入に格差がなければ合算申告も別申告もほぼ差がないことが分かります。ポイントとなるのはそれぞれの収入がどの税率の階層区分に属するかです。

下記の連邦個人所得税の税率表を参照ください。 

参考:https://www.irs.gov/pub/irs-drop/rp-22-38.pdf

以上

記事の無断転載を禁じます。

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