一度支給された失業手当を返却せよ?
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子 氏
「失業手当を申請したら、すぐに申請が受理されて支払いが始まりました」
とおっしゃっていた方がいらっしゃいます。しかし、数週間後、失業保険事務所から連絡があり、
「審査の結果、失業手当を受け取る条件を満たしていません。受け取られた失業手当を返金してください」
という連絡があったそうです。
以前にも書きましたが、米国で失業手当の給付を受けることは大変難しいです。米国では本当に困っている人の為に、失業手当の申請があった場合には、取りあえず支払いは始まります。しかし、支払いが始まったとしても、次にこの申請が失業手当を受け取る資格があるかどうかの審査があり、審査で「受け取り資格なし」とされると、一度支払われた失業手当の返金を求められます。当然のことながら、一度支給された失業手当は返す必要があります。
自己都合で退職して、次の仕事を探す間に失業手当を受け取ろうとしても、受け取れません。何等かの理由で、解雇された場合にも失業手当の受け取り資格とはなりません。失業手当を受け取れるのは、自分に非がないのに、レイオフされたときのみです。(参考文献:”What every worker should know about unemployment insurance”, Department of Employment, State of Illinois)
「高齢の両親の介護のために仕事を辞めざるを得なくなった」
これは自己都合です。まず、FMLA(家族介護休暇)を申請すべきです。
「働きにくい環境だった」
これも、直ちに失業保険の受給資格にはつながりません。セクハラを受けたのであれば、まず、会社に報告して、環境を是正してもらうべきです。会社が取り合ってくれなければ、人権局など公的機関に相談をすべきです。
「コントラクトのポジションで契約が切れた」
初めからコントラクトで期間限定の契約であったのであれば、レイオフではありません。
失業手当は本当に必要な人しかもらえません。自分で「本当に必要」と思うだけではだめです。そもそも仕事を辞める場合には、次の仕事を予め探しておくことが鉄則ですが、そうでない場合には、そのあとの生活費を貯めておく、次の仕事が見つかるまではできる限り、短期でもパートなどをする、など、自分で生活費を捻出する必要があります。
ではなぜ働いていた時には仲良くしていた元雇用主は、元従業員が失業手当を受け取るのを助けてくれないのでしょうか?
ズバリ、元雇用主にはその分のつけが回ってくるからです。元従業員が失業手当を受け取ると、失業保険事務所から一定の金額を請求されますし、失業保険の掛け金も増えてしまいます。私の住んでいるイリノイ州では、元従業員が失業手当を受け取った時点から向う3年間は失業保険の利率が上がります。車や家で事故があった場合、その後の保険の無事故割引がなくなるのと同じです。
(参考文献:”Unemployment Compensation - Illinois”, HR Simple)
失業手当は、公共の資金なのです。つまり、人のお金なのです。人のお金をあてにせず、まず、緊急時のために自分でお金を貯金しておきましょう。そして早急に次の仕事を探しましょう。
雇用主の方は、自分の会社を守るために、元従業員がレイオフでもないのに失業手当を申請した、という通知を受け取ったら、速やかに抗議をしましょう。
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