アメリカの賃金は高い?

アメリカの平均賃金は時給にして$34.10(2023年11月30日現在)だそうです。もちろんこれは、大都市も、過疎化をした場所も、プロフェッショナルな仕事も、最低賃金の仕事も含まれています。(参考文献:”US Average Hourly Earnings (I:USIHE), Charts”)

最近はご存じの通り円安です。1ドル145円で単純に円換算をして、「米国の平均時給は日本円で5000円である」などとお考えの方もいるようです。

単に円換算しても物価が違うので、日本の賃金と比較することは難しいと思います。また、何度も以前にも書きましたが、日本とアメリカの賃金構造は全く違いますので、時給だけ比べても意味がないと思います。

まず、米国では、交通費も、住宅手当も、家族手当もないのが普通です。住んでいる場所が職場から遠いとか、扶養をする必要のある子供がたくさんいるとかは、個人の問題であり、雇用主がそれに対して手当を払う必要はないのです。

郊外に住んでいる場合、日本のように公共交通機関がある場所の方が少ないので、通勤は勿論、高校生の通学やクラブ活動、アルバイトでも車での移動が必要となります。車の購入費、維持費も必要となってきます。

ボーナスも「夏・冬のボーナス」のように、従業員の権利のように支給されることはありません。ボーナスは雇用主の業績次第での支払い、ということが基本です。

退職金もありません。退職金は、ある意味、会社が従業員に変わって老後のためにお金を貯金している制度です。雇用主が貯金するぐらいなら、従業員に給料の一部としてその都度支払い、従業員が自分で貯金させる、というのが米国流です。勿論、401Kなどの個人年金はあり、会社も数パーセントは「マッチング」として貯金を手伝う場合もありますが、それでもこれは退職金ではなく、個人の貯金の一部です。

税率も日本とは違います。米国にも累進課税はありますが、米国では、超高額所得者に有利な税率になっており、一般庶民や新卒の方が支払う税金を考えると、大学を卒業した途端に給料の30%近くも税金などに持っていかれる、ということは良くあります。

因みに、従業員は連邦税、州税(州によってはない場合もある)、ソーシャル・セキュリティー(年金の掛け金)、高齢者のための医療保険であるメディケア―、低所得者を対処にした医療保険であるメディケイドの費用を給料から差し引かれます。

産休を取ることは法律で保障されてはいますが、産前・産後の休暇は無給です。

子供ができてから、保育園に預ける場合も、保育料は基本一律どの家庭も同じ値段です。親の収入によって保育料が変わることはありません。

通勤の途中、お昼休みの間は、法律上就業時間とみなされないため、この間に怪我をしても、労災ではカバーされません。

健康保険の掛け金も、雇用主が全額負担するのはかなり珍しい、と言わざるを得ません。通常は、従業員に対しては本人負担が10-20%、家族は雇用主の保険に加入できないこともありますし、加入できても従業員の負担が20-100%ある、というのもよくあることです。

そもそも、物価も給料体系も違うところの賃金を、円換算して高い、安いということは無理があります。

米国の従業員の給料を決める時には、あくまでその地域の平均賃金を参考にしてください。

昇給率を決める場合には、その年の米国の昇給率、本人のパフォーマンスを参考にしましょう。

因みに、米国の年金は毎年物価上昇分は支給額が上乗せされています。要するに、パフォーマンスに関係なくても、年金の支給額は是正されています。その年の年金の物価に対する値上がり率より昇給させる比率が低い、となるとたとえお給料を多少はあげていても、物価と比較するとお給料が下がったことと同じになります。米国の社会保障事務所は、2024年の年金支給額の引き上げは3.2%と発表しています。(参考文献:”Cost-of-Living Adjustment (COLA) Information for 2024”, Social Security Administration:)

なお、余談ですが、米国では年金を受け取っていても働いて収入がある以上は、年金の掛け金は支払う必要があります。その額もお給料から天引きされます。

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