日本の未来に希望が持てない理由(わけ)

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(心理カウンセラー)
佐藤 義規 氏

このところ、ずっと日本(国)にダメ出しをしていますが、日本の現実を捉えないことには、真の問題を認識できないように思います。当然、解決もできませんし、日本がかつての国際的な存在感と国民の安心感を取り戻すこともできないでしょう。このままではいずれこの国が破綻することになるのは間違いありません。もしもあなたがそう思わないというのであれば、あなた自身がすでに茹でガエル化していると思うべきです。

日本の過去30年の変化を表にすると、右のようになります。国民の給与は、先進国中最低まで落ちており、労働生産性もOECD加盟38カ国中23位と、もはや経済大国どころか、先進国とすら言えないレベルです。これに対して、世界のこの30年の変化はというと、人口は約1.5倍、GDPは約4.5倍です。一般的に国力の指標となる数字がことごとく落ち込んでいる上、さらに円安物価高が止まらないのが現在の日本です。8月の消費者物価指数(生鮮食品を除いた総合指数)は前年同月比2.8%上昇。食品の値上げは10月だけで6,500品目に上ります。一方で年金は減額され、もはや死活問題になっていると言っても過言ではないでしょう。それにも関わらず、このような状況をまねいた政治や行政の責任を問うどころか、未だに国民は大人しく忍従しています。諸外国であれば暴動が起きるレベルだと思います。

先月、米FRB(連邦準備制度理事会)が3会合連続で0.75%の利上げに踏み切ると、円相場は1ドル=145円の壁を突破し、さらに円安が加速しています。政府・日銀は慌てて2.8兆円もの外貨準備を取り崩して円買いドル売りの為替介入を実施しました。しかし、その効果は一週間も持続しませんでした。日本の外貨準備高は8月末時点で1.3兆ドル(約185兆円)ですが、為替介入にすぐに回せる外貨預金は20兆円ほどです。大半を占める米国債を売りに出せば、米国の金利が上昇することになるので、米政府の許可なしには動けません。(米国債売却をめぐる政治家暗殺などの陰謀論がいくつもありますが、真偽不明ですのでここでは触れません。)

何よりも日米金利差が拡大することになるので、むしろ円安を加速させることになりかねないでしょう。

財務省が9月15日に公表した貿易統計(季節調整済み)によると、15ヵ月連続の赤字で、2022年8月分は2. 3兆円の赤字でした。この貿易赤字が、円安の流れを加速させているといえます。海外から輸入したものの決済をする際、企業は基軸通貨のドルで払うために「円を売ってドルを買う」ことになります。そのため貿易赤字自体が、円安圧力を生み出すことになります。日本企業が海外で現地生産するケースも増えていますが、その際の収益は現地の再投資に回す方が効率的なので、企業側からすれば稼いだドルを日本国内で円に変換することのメリットは少ないでしょう。今年は史上最悪の貿易赤字となって、ドル買い需要もどんどん膨らむことになりそうです。こうした状況で為替介入しても焼け石に水です。アクセルとブレーキの踏み間違いによる高齢者の運転事故が増えているようですが、政府日銀は、金融緩和を継続しながら為替介入するという、アクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾した政策をしているわけです。これもアベノミクスで大量発行した国債を日銀に押し付けたことに起因しており、それが今、国民生活を脅かすようになっています。 円安はドル建て経営の大企業にはメリットがあっても、中小企業や庶民にとって輸入物価高は死活問題です。年金が減額された上、インフレで貯金や生活費が目減りする年金生活者は言うまでもありません。

経済大国を誇ってきたこの国のGDPは早晩ドイツやインドなどに抜かれ、転落することになるでしょう。それもこれも目先の利益に走り、未来に向けた政策展開を行ってこなかったからです。政治家の責任は大きいですが、それに盲従し、支えてきた国民の責任でもあります。

日本経済凋落の大きな要因である少子高齢化については、何十年も前から予想されてきたことであり、たびたび指摘されてきました。しかし、実行された対策らしきものは、出産一時金や子供手当など目先のバラマキでしかなく、保育施設の拡充や労働時間の抑制、教育費の削減など、安心して子育てができる社会環境作りについては、やっている感の演出レベルでほとんど進みませんでした。もっと踏み込んで言えば、LGBDや夫婦別姓などについても、未だに拒否反応を示す政府閣僚や与党議員は、少子高齢化や国際競争力低下の本質的な問題は理解できないでしょうし、未来に向けた政策の提言などできるハズがありません。「日本のおもてなし文化は素晴らしい」とか、「日本スゴイ」的なマスターベーションを繰り返すのが関の山です。

また、年金制度についても、減額や支給年齢の引き上げといった後手後手の策だけで、数十年も準備期間があったにも関わらず、抜本的な政策は皆無でした。それどころか、消えた年金問題の解決すら未だにできていません。住基カードの失敗があったにも関わらず、それらの反省や検証もなされずにマイナンバーカードを推進すべく、健康保険証を統合することで事実上国民への強制をしようとしています。「安心のためにもマイナンバーカードは持ち歩かずに自宅で大事に保管するように」と言っていた当初の話とは180度変わってしまったにも関わらず、未だにセキュリティについての説明はありませんし、紛失時の対応についての説明もありません。2万円のポイントに胡麻化されていいのでしょうか?このまま運転免許証まで統合されたら、紛失時の身分証明の手段も無くなってしまいます。非常に多くのトラブル被害者が産み出されることが予想されているにも関わらず、強引に進める狙いは利権以外に何があるのでしょう。

これだけ国民生活を損なってきたにも関わらず、未だに政権与党であり続ける自民党とそれを許す国民。そこが変わらなければ、この国の未来は明らかです。他に任せられる政党がないというのは、単に変化を避けているだけで、茹でガエルの発想です。未来を変えるためには、まずは選択を変えることでしょう。自民党支持を続けるのであれば、今までの延長ではなく、党体質の大きな転換を求めていくべきでしょう。

以上

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