日本で広がる格差の本質

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(心理カウンセラー)
佐藤 義規 氏

2022年を迎えたものの、一向に明るい気分になれないのは、新型コロナ感染症のオミクロン株による感染拡大によるものだけではありません。日本社会の潜在的な問題点がいたるところに見え隠れするようになっていることが、無意識に影響しているからでしょう。

新型コロナの関連では、厚生労働省が進めようとしている新型コロナウイルス感染症の位置付けの見直し問題があります。現在は新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」に位置づけられており、危険度が5段階のうち2番目に高い「2類相当」ですが、これをインフルエンザと同等の5類へ引き下げるというものです。国民の立場からするととても不安に感じますが、東京都の小池百合子知事や日本維新の会の松井一郎代表などは強く後押ししています。これによって何が変わるかというと、保健や行政の負担は軽減されますが、一方で、国民に向けた自粛要請が出せなくなり、特措法も適用できなくなります。感染者数の増加を招くことは確実で、中等症者・重症者は増え、結果的に死者も増えることになります。

さらに、医療費の自己負担は増えることになります。現在の枠組みでは医療費はすべて公費で負担されており、PCR検査を受けても、コロナ病棟に入院しても、高額な点滴治療を受けても、お金はかかりません。

しかし、5類感染症に変更になると、検査費用(PCR検査、画像検査、血液検査など)、治療(例:レムデシビルは5日治療で約38万円の薬価)、酸素投与、人工呼吸管理などは最低3割を患者が負担することになります。これらが意味するところは、社会的弱者ほどそのインパクトが大きいということです。弱者切り捨てともいえる格差社会の一端が、こうしたところにも現れているように思えます。

まったく別の分野ですが、スマホの料金引き下げについても同様の問題が隠れています。菅前総理大臣の肝入りで実現した、スマホ料金引き下げのために大手3社が始めた「ahamo(アハモ)」、「povo(ポヴォ)」、「LINEMO(ラインモ)」です。結論から言えば、ネットを使いこなせるユーザーは安い料金を享受できますが、ネットの不得手なユーザーは依然として高い料金を払い続けることになるということです。つまり、デジタル・デバイド(情報格差)を広げただけで、ここでも社会的弱者(正確には情報弱者ですが、統計的には高齢者や障害者の多くがここに該当するので、社会的弱者とします)は取り残されているわけです。一国の首相が特定の業界について、民業圧迫のプレッシャーをかけるという前代未聞の出来事でしたが、国のトップであれば、通信業界の成長戦略を描くべきでしょうし、もしくは、情報弱者救済や支援制度の策定に取り組むべきだったと思います。ここでも社会的弱者のことはまったく考えていないように思えます。

さらに、ふるさと納税が税の公平性を損なっていると指摘されている問題があります。

今や「ふるさと納税」に関するCMをテレビやインターネット上で見ない日はありません。CMで見る「ふるさと納税」は、返礼品のインターネット通販としか思えない様相です。ふるさと納税制度によって、税収が増え、それによって健全(?)な地方公共団体になることは結構ですが、一方で税収が減少し、住民サービスや福祉サービスが十分できなくなっている自治体も出てきています。返礼品競争に敗れたのだから仕方ない、その市町村の努力不足という見方がありますが、市民生活を支える公共サービスに直結する税収を、競争で奪い合うような仕組みは異常と言えるでしょう。ふるさと納税を行ったことで、自分が住む市町村の税収が減り、そのために自分や家族が公共サービスを受けられなくなったとしても、誰にも文句は言えないでしょう。しかし、住民税を納めているにも関わらず、公共サービスを十分受けられなくなっている人たちにとっては、とても納得できません。専門的に言えば、財政需要を住民が分任する「負担分任原則」が、ふるさと納税によって歪められているということです。国は本来の税のあり方とかけ離れた現状を認識し、公平な税制度へと、ふるさと納税を見直すべきですが、そうした議論はなされていません。

いくつかの問題を挙げましたが、現在の政府与党が進めている政策の多くが、目の前の選挙を乗り切るための人気取り政策のオンパレードと化しており、同時に、実施される制度や政策の多くに利権が絡んでいるように見える点も気になります。また、公平性や社会的弱者への視点が欠け、格差拡大が広がっており、それを自己責任という言葉で切り捨てるような風潮を産み出す原因を作っているようにも思えます。公平で安心な社会という国民が求める国の姿とは大きくかけ離れていないでしょうか。国家100年の計とも言うべき、遠い将来まで見通した国民のための制度設計や政策がまったく見えません。長く続いている少子高齢化問題も同様です。安心して子供を産んで育てていくための環境の整備ではなく、子育て世帯に給付金をばらまくといった目先のことだけで終始している現状を見ると、日本という国に明るい未来が期待できるはずもありません。新型コロナ感染症によって、世界中が厳しい状況に陥っている現在だからこそ、明るい未来が期待できるような政治が求められると思います。

新年早々、厳しい話になりましたが、国民自身も目先の政策に振り回されることなく、将来を任せるに足る政治家や政党を見極め、時には厳しい声を上げる必要があると認識すべきでしょう。

記事の無断転載を禁じます。

事業運営上の様々なコンサルタント(業績改善、事業分析、戦略作成支援、人材教育など)やメンタープログラム(心理カウンセリング)を行っています。 お気軽にご相談ください。

事業運営上の様々なコンサルタント(業績改善、事業分析、戦略作成支援、人材教育など)やメンタープログラム(心理カウンセリング)を行っています。 お気軽にご相談ください。

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(心理カウンセラー)
神奈川県川崎市川崎区京町2-3-1-503
050-5881-8006
Email: y.sato.sim@gmail.com
http://simconsul.web.fc2.com/

Previous
Previous

永住権放棄時の金融機関の選択方法